涼はロードレーサーに乗って三崎家へ向かう。玄関先にロードレーサーを置いて、玄関のインターホンを鳴らす。誠おじさんが何も知らない顔で出てくる。
「涼じゃなか。そんな怒った顔をしてどうしたんだ?」
「楓乃は帰ってきてる?」
「ああ、先ほど帰ってきて、今は自分の部屋へ戻ってる」
「あいつ……愛理沙に向かって酷いことをしやがった」
「玄関で長話も目立つ。話を聞くから部屋へ入ってくれ」
誠おじさんに促されて、涼は三崎家の玄関へ入って靴を脱いで、リビングへ入る。
「あら、涼、こっちに来てくれるなんて珍しいわね……嬉しいわ」
「涼はそれどころではないらしい。母さんも一緒に涼の話を聞きなさい」
誠おじさんと小梢おばさんは隣同士でソファに座り、涼は対面もソファに座る。
そして今日の放課後に楓乃がしでかした事の全てを説明する。誠おじさんの眉は吊り上がり、小梢おばさんは悲しそうに俯いて、エプロンで涙を拭いている。
「小梢にも、きっちりと涼と愛理沙の事故のことを理解してもらおうと、リビングで話をしていたんだ。それを楓乃が廊下で立ち聞きしていたんだろう。これは俺の不注意だすまん」
「誠おじさんからも小梢おばさんからも謝罪をもらおうと思っていない。このことで愛理沙の心が酷く傷ついた。楓乃は、友達達の前で、『俺の両親を殺したのは、愛理沙の父親で、俺と交際する資格はない』って言ったんだ。友達達は理解があるから愛理沙を責めることはしなかったが、他の学生達がいる時に言われていたら、愛理沙の学生生活は終わっていた。楓乃のにそんなことをする権利なんてない」
「涼の言う通りだ。小梢、楓乃のを連れてきてくれ」
しばらくすると頬を膨らませた楓乃がリビングへ引きずられてきた。全く、涼に謝る様子もない。
誠おじさんは立ち上がって楓乃の真正面に立つ。
「お前は今日、最低なことをしたことを自覚しているか? 愛理沙ちゃんの過去を無理やり暴き立てて、涼と愛理沙ちゃんの仲を引き裂こうとした。人には立ち入ってはいけない心の領分がある。それをお前は犯した。そのことをお前は理解しているか?」
「元々、愛理沙のお父さんがバス衝突の事故を起こさなかったら、涼の家族も生きてたんじゃない。愛理沙の両親も愛理沙も罪を償うべきよ。罰を受けて当然だわ」
「愛理沙ちゃんのお父さんは、高速道路で運転中に心筋梗塞になって、運転不能になったんだ。だから車が不幸にもバスに追突してしまった。これは不幸な事故だったんだ。愛理沙ちゃんの父親が悪いわけでもない」
「そんな体で運転する自体、間違ってるじゃん。全部、愛理沙と愛理沙の両親が悪いのよ。その上、涼にそのことを黙って……涼を騙して付き合っているなんて最低じゃない」
誠おじさんが言葉を尽くして、楓乃を諭そうとするが、楓乃は自分の意見を曲げない。微塵にも自分が悪いことをしたとは思っていない。なぜ自分が責められないといけないのかと、誠おじさんの言葉を突っぱねる。
涼は立ち上がって楓乃を見る。
「俺は今まで、人に対して、これほど腹立たしく思ったことはない。楓乃、お前は最低だ! 人の心を理解しようともせず、人の心に土足で入ってくる無神経さに吐き気がする。2度と俺のことを苗字でも名前でも呼ぶな。お前とは赤の他人だ。2度と俺の前に顔を出すな! そして愛理沙の近くにも近寄るな!」
「私は涼のためを思ってしたことじゃない……どうして私が涼から責められないといけないのよ……私は、騙していた愛理沙から涼を助けてあげた恩人よ」
「馬鹿なことを言うな。もし、愛理沙のご両親が俺の家族を殺していたとしても、それは愛理沙がしたことではない。それに愛理沙は十分に傷ついている。俺はそのことを知っていても愛理沙を受け入れていた。楓乃のことを受け入れることは一生ない! お前のことは一生大嫌いだ!」
楓乃がリビングを飛び出そうとすると、誠おじさんが楓乃の腕を掴んで、楓乃の顔にビンタをする。
「―――痛い! 痛いじゃないのよ! どうして私がビンタされるのよ!」
「今のお前の心は最低だ。これから1週間、学校へ行くことも許さん。お母さんに毎日、心について諭してもらえ。俺から学校へ連絡をいれておく。お前は自宅謹慎だ!」
「何よ……3人共、愛理沙ばかりを庇って、私のことを苛めて……私のことを悪者にして……3人共、大嫌いよ!」
楓乃はそう言い残すとリビングから出て自分の部屋へと戻っていった。
「楓乃があそこまで馬鹿な行動をするとは思わなかった。本当にすまん」
誠おじさんと小梢おばさんが1週間かけて、楓乃に理解してもらえるように努めるという。あれだけ頑固になっていると楓乃を理解させることは簡単なことではない。
「涼には迷惑をかけないようにする。本当にすまなかった」
「本当は俺に謝るより愛理沙に謝ってほしい。1番傷ついたのは愛理沙なんだから。俺は2度と楓乃を許さない! このことは仕方ないと思ってほしい!」
「そういえば今、愛理沙ちゃんはどうしているんだ? 涼は探さなくていいのか?」
「愛理沙は今は女友達の家で保護してもらっている。だから大丈夫だよ」
三崎家に来る前にスマホに、湊から連絡があり、愛理沙は今、聖香の家でゆっくりしていると聞いている。
「もし、俺の愛理沙の仲がこれで壊れたら、誠おじさんと小梢おばさんでも許さない! 楓乃も許さない!」
「甘やかして育てた俺達の落ち度は大きい。まさか人の心を踏みにじる子に育つとは……親として情けない」
「俺はまだ、行くところがあるので、これで失礼します」
涼は深々と頭を下げて、急いでリビングから出て、玄関で靴を履いて外へ出る。
外はすでに夜の帳が降りている。
星空が輝き、満月が地上を照らしている。
涼は三崎家を振り返らず、ロードレーサーに乗ると、聖香のマンションへ向かって走った。
「涼じゃなか。そんな怒った顔をしてどうしたんだ?」
「楓乃は帰ってきてる?」
「ああ、先ほど帰ってきて、今は自分の部屋へ戻ってる」
「あいつ……愛理沙に向かって酷いことをしやがった」
「玄関で長話も目立つ。話を聞くから部屋へ入ってくれ」
誠おじさんに促されて、涼は三崎家の玄関へ入って靴を脱いで、リビングへ入る。
「あら、涼、こっちに来てくれるなんて珍しいわね……嬉しいわ」
「涼はそれどころではないらしい。母さんも一緒に涼の話を聞きなさい」
誠おじさんと小梢おばさんは隣同士でソファに座り、涼は対面もソファに座る。
そして今日の放課後に楓乃がしでかした事の全てを説明する。誠おじさんの眉は吊り上がり、小梢おばさんは悲しそうに俯いて、エプロンで涙を拭いている。
「小梢にも、きっちりと涼と愛理沙の事故のことを理解してもらおうと、リビングで話をしていたんだ。それを楓乃が廊下で立ち聞きしていたんだろう。これは俺の不注意だすまん」
「誠おじさんからも小梢おばさんからも謝罪をもらおうと思っていない。このことで愛理沙の心が酷く傷ついた。楓乃は、友達達の前で、『俺の両親を殺したのは、愛理沙の父親で、俺と交際する資格はない』って言ったんだ。友達達は理解があるから愛理沙を責めることはしなかったが、他の学生達がいる時に言われていたら、愛理沙の学生生活は終わっていた。楓乃のにそんなことをする権利なんてない」
「涼の言う通りだ。小梢、楓乃のを連れてきてくれ」
しばらくすると頬を膨らませた楓乃がリビングへ引きずられてきた。全く、涼に謝る様子もない。
誠おじさんは立ち上がって楓乃の真正面に立つ。
「お前は今日、最低なことをしたことを自覚しているか? 愛理沙ちゃんの過去を無理やり暴き立てて、涼と愛理沙ちゃんの仲を引き裂こうとした。人には立ち入ってはいけない心の領分がある。それをお前は犯した。そのことをお前は理解しているか?」
「元々、愛理沙のお父さんがバス衝突の事故を起こさなかったら、涼の家族も生きてたんじゃない。愛理沙の両親も愛理沙も罪を償うべきよ。罰を受けて当然だわ」
「愛理沙ちゃんのお父さんは、高速道路で運転中に心筋梗塞になって、運転不能になったんだ。だから車が不幸にもバスに追突してしまった。これは不幸な事故だったんだ。愛理沙ちゃんの父親が悪いわけでもない」
「そんな体で運転する自体、間違ってるじゃん。全部、愛理沙と愛理沙の両親が悪いのよ。その上、涼にそのことを黙って……涼を騙して付き合っているなんて最低じゃない」
誠おじさんが言葉を尽くして、楓乃を諭そうとするが、楓乃は自分の意見を曲げない。微塵にも自分が悪いことをしたとは思っていない。なぜ自分が責められないといけないのかと、誠おじさんの言葉を突っぱねる。
涼は立ち上がって楓乃を見る。
「俺は今まで、人に対して、これほど腹立たしく思ったことはない。楓乃、お前は最低だ! 人の心を理解しようともせず、人の心に土足で入ってくる無神経さに吐き気がする。2度と俺のことを苗字でも名前でも呼ぶな。お前とは赤の他人だ。2度と俺の前に顔を出すな! そして愛理沙の近くにも近寄るな!」
「私は涼のためを思ってしたことじゃない……どうして私が涼から責められないといけないのよ……私は、騙していた愛理沙から涼を助けてあげた恩人よ」
「馬鹿なことを言うな。もし、愛理沙のご両親が俺の家族を殺していたとしても、それは愛理沙がしたことではない。それに愛理沙は十分に傷ついている。俺はそのことを知っていても愛理沙を受け入れていた。楓乃のことを受け入れることは一生ない! お前のことは一生大嫌いだ!」
楓乃がリビングを飛び出そうとすると、誠おじさんが楓乃の腕を掴んで、楓乃の顔にビンタをする。
「―――痛い! 痛いじゃないのよ! どうして私がビンタされるのよ!」
「今のお前の心は最低だ。これから1週間、学校へ行くことも許さん。お母さんに毎日、心について諭してもらえ。俺から学校へ連絡をいれておく。お前は自宅謹慎だ!」
「何よ……3人共、愛理沙ばかりを庇って、私のことを苛めて……私のことを悪者にして……3人共、大嫌いよ!」
楓乃はそう言い残すとリビングから出て自分の部屋へと戻っていった。
「楓乃があそこまで馬鹿な行動をするとは思わなかった。本当にすまん」
誠おじさんと小梢おばさんが1週間かけて、楓乃に理解してもらえるように努めるという。あれだけ頑固になっていると楓乃を理解させることは簡単なことではない。
「涼には迷惑をかけないようにする。本当にすまなかった」
「本当は俺に謝るより愛理沙に謝ってほしい。1番傷ついたのは愛理沙なんだから。俺は2度と楓乃を許さない! このことは仕方ないと思ってほしい!」
「そういえば今、愛理沙ちゃんはどうしているんだ? 涼は探さなくていいのか?」
「愛理沙は今は女友達の家で保護してもらっている。だから大丈夫だよ」
三崎家に来る前にスマホに、湊から連絡があり、愛理沙は今、聖香の家でゆっくりしていると聞いている。
「もし、俺の愛理沙の仲がこれで壊れたら、誠おじさんと小梢おばさんでも許さない! 楓乃も許さない!」
「甘やかして育てた俺達の落ち度は大きい。まさか人の心を踏みにじる子に育つとは……親として情けない」
「俺はまだ、行くところがあるので、これで失礼します」
涼は深々と頭を下げて、急いでリビングから出て、玄関で靴を履いて外へ出る。
外はすでに夜の帳が降りている。
星空が輝き、満月が地上を照らしている。
涼は三崎家を振り返らず、ロードレーサーに乗ると、聖香のマンションへ向かって走った。