学校が終わった放課後、2人で自転車を押して帰る。
朝、皆に交際を告げた後から、愛理沙の元気がない。
やはり楓乃のことを気にしているのだろう。
「愛理沙…今日は気分を変えて、駅前にでも行かないか? 愛理沙の好きそうな映画があったら観て帰ろうよ」
「私……そんな気分じゃない……」
「落ち込んでいても楓乃との関係が直らないよ……このままだと愛理沙が参ってしまうよ……そのほうが俺にとっては問題だ……今日は俺のワガママに付き合ってくれないかな?」
「涼がそこまでいうなら……」
駅前のロータリ広場まで行って、駐輪場へ自転車を止める。
そして、シアタービルへと向かう。
「どんな映画が見たい?」
「静かな映画……」
静かな映画…難しい答えが返ってきた。
映画とは大音量と大画面で観るものだ。静かだと映画にならない。
「私……少し静かな所に座りたい」
「わかった。少し静かな場所で座ってから映画を観よう」
「―――ありがとう」
涼と愛理沙の2人はシアタービルを出て、すぐ近くの喫茶店へ入った。
喫茶店ではR&Bが静かに流れている、おシャレナ喫茶店だった。
4人がけのテーブルの2人だけで座って、喫茶店のお姉さんにミルクティを頼む。
「可愛いお二人さんね。カップルかな? いいな……お似合ね」
喫茶店のお姉さんがそんなことを言って、カウンターの中へと入っていく。
そしてすぐにミルクティをテーブルに運んでくれた。
愛理沙は喫茶店に着いてからも黙ったまま、俯いたままだ。
涼も言葉が見つからずに、黙ったままミルクティを飲む。
喫茶店のお姉さんがカウンターから出て来て、喫茶店のドアにかけてある木製のカードをOPENからCLOSEに変える。
「もう、このお店、閉めちゃったから、2人でゆっくりしていって……何か訳ありのようだからさ」
「すみません……なんだかお店に迷惑かけてしまって」
「いいのよ……私ってお節介な質だから」
そう言ってカウンターの中へ入って、お姉さんはカウンター中の椅子に座る。
2人共、黙ったまま時間が流れていく。
愛理沙も黙ったまま、涼も黙ったまま、何も話さない。
そうしていると、愛理沙の目から大粒の涙があふれ出し、頬を伝って制服を濡らす。
涼は自分のポケットからハンカチを取り出して愛理沙に手渡す。
愛理沙はハンカチを受け取って涙を拭くが、涙は止まらず、制服を濡らしていく。
「あらら……これは重症ね」
お姉さんがタオルを持ってきて、愛理沙の制服をタオルで拭いて、愛理沙にタオルを渡す。
愛理沙はタオルに顔を埋めて嗚咽しながら泣き続ける。
「何があったのかわからないけどさ……お姉さんでよければ話してみなさいよ……全くの他人に話をすると少しは気分が楽になるかもしれないわよ」
お姉さんは愛理沙の隣に座って、愛理沙の背中をさすりながら涼を見る。
これは涼に内容を説明しろということだろうか。
お姉さんの視線が真剣で怖い。
まさか、涼が泣かしていると誤解されているのかもしれない。
涼はポツポツを朝の出来事を説明し、少しだけ愛理沙との出会いから今日までのことを説明した。
「そうか――そんなことがあったんだ。愛理沙ちゃんは楓乃ちゃんとも仲良くしていたかったんだね。だから仲良くできなくなって悲しんでるんだ。楓乃のちゃんに自分を否定されちゃったんだから泣いちゃうよね」
愛理沙も涼もお姉さんの言葉に何も返せない。
「こう考えたらどうかな……2人が付き合ったことで、1人の女の子を不幸にしてしまいました。これは事実。だからこそ、2人はその子の分まで幸せにならないといけないって。その子の分まで笑顔でいないといけないって」
愛理沙がビックリしたようにお姉さんの顔を見つめる。
「私ってさ…頭悪いから、上手く話できないけどさ……2人は絶対に幸せにならないといけないと思う。だって、その子の幸せを壊したんだから。その子の幸せを壊しても、。自分達の幸せを選んだんだから」
愛理沙はお姉さんの言葉を聞いて、肩をビクッと震わせてタオルの中に顔を埋めて、何度も大きく頷く。
お姉さんは優しく、愛理沙の背中をさすって、髪を梳く。
すると段々と愛理沙の涙が止まり、段々と落ち着いてきた。
「私もそう思います…私は楓乃の幸せを壊しました。自分の幸せを選びました。だから楓乃の分まで幸せにならないと楓乃に申し訳ないです。楓乃の分まで笑顔でいます……教えていただき、ありとうございます」
「なんなんだろうなー……2人とは初めて会ったんだけどさ……2人には幸せになってもらいたいって思ちゃった。2人からは何も聞いてないけどさ……2人って人に言えない重荷を背っていそうだから……幸せになってほしい」
涼も愛理沙も自分達の過去についてはお姉さんに一切話していない。それなのになぜ、お姉さんは的確に涼達のことがわかったのだろう。涼は不思議でたまらなかった。
「私にもよくわからないんだけど……女の勘ね」
そう言ってお姉さんはにっこりと笑った。
「今日はこのまま帰りなさい。また、ゆっくりとお店に来てね」
涼がミルクティ代を払おうとすると、お姉さんは笑って受け取らなかった。
「また来てくれたら、その時はお金をもらうわね」
「ありがとうございます……少し気分が晴れました」
「愛理沙を落ち着けてもらってありがとうございます……また2人で来ます」
お姉さんは笑顔で玄関をドアを開けてくれて、道路に出て涼と愛理沙に手を振ってくれる。涼と愛理沙も2人でお辞儀をして、笑顔で手を振って駅のターミナル広場へ向かった。
朝、皆に交際を告げた後から、愛理沙の元気がない。
やはり楓乃のことを気にしているのだろう。
「愛理沙…今日は気分を変えて、駅前にでも行かないか? 愛理沙の好きそうな映画があったら観て帰ろうよ」
「私……そんな気分じゃない……」
「落ち込んでいても楓乃との関係が直らないよ……このままだと愛理沙が参ってしまうよ……そのほうが俺にとっては問題だ……今日は俺のワガママに付き合ってくれないかな?」
「涼がそこまでいうなら……」
駅前のロータリ広場まで行って、駐輪場へ自転車を止める。
そして、シアタービルへと向かう。
「どんな映画が見たい?」
「静かな映画……」
静かな映画…難しい答えが返ってきた。
映画とは大音量と大画面で観るものだ。静かだと映画にならない。
「私……少し静かな所に座りたい」
「わかった。少し静かな場所で座ってから映画を観よう」
「―――ありがとう」
涼と愛理沙の2人はシアタービルを出て、すぐ近くの喫茶店へ入った。
喫茶店ではR&Bが静かに流れている、おシャレナ喫茶店だった。
4人がけのテーブルの2人だけで座って、喫茶店のお姉さんにミルクティを頼む。
「可愛いお二人さんね。カップルかな? いいな……お似合ね」
喫茶店のお姉さんがそんなことを言って、カウンターの中へと入っていく。
そしてすぐにミルクティをテーブルに運んでくれた。
愛理沙は喫茶店に着いてからも黙ったまま、俯いたままだ。
涼も言葉が見つからずに、黙ったままミルクティを飲む。
喫茶店のお姉さんがカウンターから出て来て、喫茶店のドアにかけてある木製のカードをOPENからCLOSEに変える。
「もう、このお店、閉めちゃったから、2人でゆっくりしていって……何か訳ありのようだからさ」
「すみません……なんだかお店に迷惑かけてしまって」
「いいのよ……私ってお節介な質だから」
そう言ってカウンターの中へ入って、お姉さんはカウンター中の椅子に座る。
2人共、黙ったまま時間が流れていく。
愛理沙も黙ったまま、涼も黙ったまま、何も話さない。
そうしていると、愛理沙の目から大粒の涙があふれ出し、頬を伝って制服を濡らす。
涼は自分のポケットからハンカチを取り出して愛理沙に手渡す。
愛理沙はハンカチを受け取って涙を拭くが、涙は止まらず、制服を濡らしていく。
「あらら……これは重症ね」
お姉さんがタオルを持ってきて、愛理沙の制服をタオルで拭いて、愛理沙にタオルを渡す。
愛理沙はタオルに顔を埋めて嗚咽しながら泣き続ける。
「何があったのかわからないけどさ……お姉さんでよければ話してみなさいよ……全くの他人に話をすると少しは気分が楽になるかもしれないわよ」
お姉さんは愛理沙の隣に座って、愛理沙の背中をさすりながら涼を見る。
これは涼に内容を説明しろということだろうか。
お姉さんの視線が真剣で怖い。
まさか、涼が泣かしていると誤解されているのかもしれない。
涼はポツポツを朝の出来事を説明し、少しだけ愛理沙との出会いから今日までのことを説明した。
「そうか――そんなことがあったんだ。愛理沙ちゃんは楓乃ちゃんとも仲良くしていたかったんだね。だから仲良くできなくなって悲しんでるんだ。楓乃のちゃんに自分を否定されちゃったんだから泣いちゃうよね」
愛理沙も涼もお姉さんの言葉に何も返せない。
「こう考えたらどうかな……2人が付き合ったことで、1人の女の子を不幸にしてしまいました。これは事実。だからこそ、2人はその子の分まで幸せにならないといけないって。その子の分まで笑顔でいないといけないって」
愛理沙がビックリしたようにお姉さんの顔を見つめる。
「私ってさ…頭悪いから、上手く話できないけどさ……2人は絶対に幸せにならないといけないと思う。だって、その子の幸せを壊したんだから。その子の幸せを壊しても、。自分達の幸せを選んだんだから」
愛理沙はお姉さんの言葉を聞いて、肩をビクッと震わせてタオルの中に顔を埋めて、何度も大きく頷く。
お姉さんは優しく、愛理沙の背中をさすって、髪を梳く。
すると段々と愛理沙の涙が止まり、段々と落ち着いてきた。
「私もそう思います…私は楓乃の幸せを壊しました。自分の幸せを選びました。だから楓乃の分まで幸せにならないと楓乃に申し訳ないです。楓乃の分まで笑顔でいます……教えていただき、ありとうございます」
「なんなんだろうなー……2人とは初めて会ったんだけどさ……2人には幸せになってもらいたいって思ちゃった。2人からは何も聞いてないけどさ……2人って人に言えない重荷を背っていそうだから……幸せになってほしい」
涼も愛理沙も自分達の過去についてはお姉さんに一切話していない。それなのになぜ、お姉さんは的確に涼達のことがわかったのだろう。涼は不思議でたまらなかった。
「私にもよくわからないんだけど……女の勘ね」
そう言ってお姉さんはにっこりと笑った。
「今日はこのまま帰りなさい。また、ゆっくりとお店に来てね」
涼がミルクティ代を払おうとすると、お姉さんは笑って受け取らなかった。
「また来てくれたら、その時はお金をもらうわね」
「ありがとうございます……少し気分が晴れました」
「愛理沙を落ち着けてもらってありがとうございます……また2人で来ます」
お姉さんは笑顔で玄関をドアを開けてくれて、道路に出て涼と愛理沙に手を振ってくれる。涼と愛理沙も2人でお辞儀をして、笑顔で手を振って駅のターミナル広場へ向かった。