涼が手を握っている間だけは、安らかな寝顔で眠っている。
しかし、涼が手を離すと、また……愛理沙はうなされ始める。
このアパートへ来てから、ずっと、この現象が続いている。
たぶん、親戚の家でも愛理沙はうなされ続けていたのだろう。
しかし、誰にも知られずに放置されていた。
そのことろ考えると、涼の心はキュッと苦しくなり、愛理沙のことを愛おしくなる。どうして、愛理沙がここまで苦しまなければならないのだろう。
できることなら涼は自分が代わってあげられたらいいのにと思う。
ギュッと手を握り返された。涼が意識を戻すと、布団の中から愛理沙が大きな瞳で見つめている。
「涼……私の手を握って何をしてるの?」
「―――愛理沙が少しうなされているようだったから……少し気になって手を握っていた……気分はどう?」
「いつもの嫌な夢を見てた……私、うなされていたのね……涼……ありがとう」
「いいんだよ。俺には手を握るぐらいしかできないからね」
愛理沙は嬉しそうに涼の手を両手で握りしめて、安心したように微笑む。
「目が覚めちゃった……ワガママ言っていい?」
「うん…いいよ」
「あの公園へ行きたい……涼と出会った公園……公園で座っていると、不思議と安心するの」
「愛理沙が安心して眠ることができるなら、公園へ少し散歩に行こう」
部屋の電気を点けて、愛理沙はダイニングで、涼は私室で私服に着替えて、玄関を出る。まだ4月の夜中の空気は静かで肌寒い。
ポツポツと点いている外灯が道を明るく照らしている。
愛理沙と2人で公園までゆっくりと歩く。
愛理沙の精神は安定しているようで、歩くことを楽しんでいるようだ。
「驚かせてごめんね……親戚の家でも、同じ嫌な夢を何度も見て、夜中に起きたことがあるの」
「そうなんだ……俺のアパートに来てから初めてうなされていたから、ビックリしたよ」
涼は愛理沙がアパートに来た時から、うなされていることを隠した。
正直に答えて、愛理沙がショックを受けることが嫌だった。
夜空には大きな半月が浮かんで、地上を照らしている。その周りには星空が瞬いている。
「静かで、落ちつくね……こういう時間…私は好きよ」
「そうだな…俺は愛理沙と一緒だったら、どの時間でも好きだよ」
「アウ―――どうして、そんなことをサラッと言っちゃうかな……恥ずかしいよ」
愛理沙は口の中が抗議するが、あまりに声が小さいたけ涼の耳には届かない。愛理沙は顔を耳まで真っ赤にして、涼から顔を逸らして、公園へと歩いていく。
公園へ着いて、愛理沙はベンチに座り、涼は自販機でコーヒーとミルクティを買って、愛理沙にミルクティを渡す。愛理沙は両手でミルクティの缶を持って、手を温める。涼も愛理沙の隣に座って、コーヒーの缶で手を温める。
「涼……私の過去を知りたい?」
「……愛理沙が言いたくないなら、聞きたくない。愛理沙が落ち着いて、俺に話せると思った時でいい」
「ありがとう……ゴメンね」
「いいんだよ……俺も愛理沙には過去を言っていないからね」
愛理沙は寂しげな顔をして涼を見つめる。
「涼は話してくれないの?」
「俺も、話せる時が来たら……愛理沙に話そうと思ってる……今はその勇気がない」
「涼が話せるようになったら、私に聞かせてね……涼の過去なら……私は何でも受け止めるから」
「―――ありがとう」
2人で星空を見上げながら、愛理沙はミルクティを飲み、涼はコーヒーを飲む。
落ち着いて、穏やかな空気が2人の間を流れる。
そのまま、1時間ほど無言で星空を眺めていた。
さすがに体が冷えてきた。
愛理沙も少し寒そうだ。
「愛理沙…もう、そろそろ帰ろうか……体が冷えてきたし」
「うん……ありがとう……帰ろう」
流石に深夜時間なので、風が少し冷たい。
「愛理沙…その……手をつないでもいいか」
愛理沙は涼を見て、恥ずかしそうに照れて、顔を背ける。
しかし、体を寄り添わせて、涼の手に指を絡ませる。
涼も愛理沙の手に指を絡ませて、しっかりと握る。
2人で手を繋いでアパートまで帰る。
その間、2人は手を繋いだまま、涼はしっかりと愛理沙の手を握っていた。
アパートの鍵を開けて2人へ部屋の中へ入る。
「やっぱり部屋の中は暖かいね」
「そうだね…深夜の公園は少し寒かったな……でも夜空が星でいっぱいできれいだったな」
「うん……連れて行ってくれて、ありがとう」
涼は私室でパジャマに着替え、愛理沙はダイニングでパジャマに着替える。愛理沙が布団に入ったので、部屋の電気を消して、涼は愛理沙の手を両手で握る。
「今日はもう、うなされないと思う。涼が居てくれるから安心。大丈夫よ」
「それは知ってるんだけどさ……愛理沙がうなされるのはツライんだ。だから安心するまで手を握っておく。その間に愛理沙は寝ていいよ」
「涼だけ、座って起こしておくことなんてできないよ……涼……私のお布団へ入ってきて。そのほうが涼も温かいし……私も安心して眠れるから……」
「え!」
「早く……私も恥ずかしいんだから……涼だから特別なんだから」
涼が布団の中へ入ると、愛理沙の顔が間近にある。愛理沙は涼の両手を自分の手で包んで握りしめる。
涼の瞳と愛理沙の瞳が間近で重なる。
愛理沙の布団からは、愛理沙の優しくて甘い香りがして、涼の胸はドキドキと高鳴る。
「布団の中はとても暖かいでしょう。これで涼も安心して眠れるね……」
「―――うん―――」
愛理沙は安心しきった顔で目をつむると、涼の額に自分の額を当てる。
「―――とても安心する。ありがとう……涼……」
すぐに愛理沙は穏やかな寝息を立てて、眠りに入っていった。
涼は胸が高鳴って、いつまでも眠ることができない。
すると愛理沙は目をつむったまま涼の体にしがみついてきて、涼の体にギュッと抱き着く。
「涼……今日だけはギュッとしてほしい……」
「うん……」
涼は優しく愛理沙を包みこように抱いて、2人で眠りの中へ落ちていった。
しかし、涼が手を離すと、また……愛理沙はうなされ始める。
このアパートへ来てから、ずっと、この現象が続いている。
たぶん、親戚の家でも愛理沙はうなされ続けていたのだろう。
しかし、誰にも知られずに放置されていた。
そのことろ考えると、涼の心はキュッと苦しくなり、愛理沙のことを愛おしくなる。どうして、愛理沙がここまで苦しまなければならないのだろう。
できることなら涼は自分が代わってあげられたらいいのにと思う。
ギュッと手を握り返された。涼が意識を戻すと、布団の中から愛理沙が大きな瞳で見つめている。
「涼……私の手を握って何をしてるの?」
「―――愛理沙が少しうなされているようだったから……少し気になって手を握っていた……気分はどう?」
「いつもの嫌な夢を見てた……私、うなされていたのね……涼……ありがとう」
「いいんだよ。俺には手を握るぐらいしかできないからね」
愛理沙は嬉しそうに涼の手を両手で握りしめて、安心したように微笑む。
「目が覚めちゃった……ワガママ言っていい?」
「うん…いいよ」
「あの公園へ行きたい……涼と出会った公園……公園で座っていると、不思議と安心するの」
「愛理沙が安心して眠ることができるなら、公園へ少し散歩に行こう」
部屋の電気を点けて、愛理沙はダイニングで、涼は私室で私服に着替えて、玄関を出る。まだ4月の夜中の空気は静かで肌寒い。
ポツポツと点いている外灯が道を明るく照らしている。
愛理沙と2人で公園までゆっくりと歩く。
愛理沙の精神は安定しているようで、歩くことを楽しんでいるようだ。
「驚かせてごめんね……親戚の家でも、同じ嫌な夢を何度も見て、夜中に起きたことがあるの」
「そうなんだ……俺のアパートに来てから初めてうなされていたから、ビックリしたよ」
涼は愛理沙がアパートに来た時から、うなされていることを隠した。
正直に答えて、愛理沙がショックを受けることが嫌だった。
夜空には大きな半月が浮かんで、地上を照らしている。その周りには星空が瞬いている。
「静かで、落ちつくね……こういう時間…私は好きよ」
「そうだな…俺は愛理沙と一緒だったら、どの時間でも好きだよ」
「アウ―――どうして、そんなことをサラッと言っちゃうかな……恥ずかしいよ」
愛理沙は口の中が抗議するが、あまりに声が小さいたけ涼の耳には届かない。愛理沙は顔を耳まで真っ赤にして、涼から顔を逸らして、公園へと歩いていく。
公園へ着いて、愛理沙はベンチに座り、涼は自販機でコーヒーとミルクティを買って、愛理沙にミルクティを渡す。愛理沙は両手でミルクティの缶を持って、手を温める。涼も愛理沙の隣に座って、コーヒーの缶で手を温める。
「涼……私の過去を知りたい?」
「……愛理沙が言いたくないなら、聞きたくない。愛理沙が落ち着いて、俺に話せると思った時でいい」
「ありがとう……ゴメンね」
「いいんだよ……俺も愛理沙には過去を言っていないからね」
愛理沙は寂しげな顔をして涼を見つめる。
「涼は話してくれないの?」
「俺も、話せる時が来たら……愛理沙に話そうと思ってる……今はその勇気がない」
「涼が話せるようになったら、私に聞かせてね……涼の過去なら……私は何でも受け止めるから」
「―――ありがとう」
2人で星空を見上げながら、愛理沙はミルクティを飲み、涼はコーヒーを飲む。
落ち着いて、穏やかな空気が2人の間を流れる。
そのまま、1時間ほど無言で星空を眺めていた。
さすがに体が冷えてきた。
愛理沙も少し寒そうだ。
「愛理沙…もう、そろそろ帰ろうか……体が冷えてきたし」
「うん……ありがとう……帰ろう」
流石に深夜時間なので、風が少し冷たい。
「愛理沙…その……手をつないでもいいか」
愛理沙は涼を見て、恥ずかしそうに照れて、顔を背ける。
しかし、体を寄り添わせて、涼の手に指を絡ませる。
涼も愛理沙の手に指を絡ませて、しっかりと握る。
2人で手を繋いでアパートまで帰る。
その間、2人は手を繋いだまま、涼はしっかりと愛理沙の手を握っていた。
アパートの鍵を開けて2人へ部屋の中へ入る。
「やっぱり部屋の中は暖かいね」
「そうだね…深夜の公園は少し寒かったな……でも夜空が星でいっぱいできれいだったな」
「うん……連れて行ってくれて、ありがとう」
涼は私室でパジャマに着替え、愛理沙はダイニングでパジャマに着替える。愛理沙が布団に入ったので、部屋の電気を消して、涼は愛理沙の手を両手で握る。
「今日はもう、うなされないと思う。涼が居てくれるから安心。大丈夫よ」
「それは知ってるんだけどさ……愛理沙がうなされるのはツライんだ。だから安心するまで手を握っておく。その間に愛理沙は寝ていいよ」
「涼だけ、座って起こしておくことなんてできないよ……涼……私のお布団へ入ってきて。そのほうが涼も温かいし……私も安心して眠れるから……」
「え!」
「早く……私も恥ずかしいんだから……涼だから特別なんだから」
涼が布団の中へ入ると、愛理沙の顔が間近にある。愛理沙は涼の両手を自分の手で包んで握りしめる。
涼の瞳と愛理沙の瞳が間近で重なる。
愛理沙の布団からは、愛理沙の優しくて甘い香りがして、涼の胸はドキドキと高鳴る。
「布団の中はとても暖かいでしょう。これで涼も安心して眠れるね……」
「―――うん―――」
愛理沙は安心しきった顔で目をつむると、涼の額に自分の額を当てる。
「―――とても安心する。ありがとう……涼……」
すぐに愛理沙は穏やかな寝息を立てて、眠りに入っていった。
涼は胸が高鳴って、いつまでも眠ることができない。
すると愛理沙は目をつむったまま涼の体にしがみついてきて、涼の体にギュッと抱き着く。
「涼……今日だけはギュッとしてほしい……」
「うん……」
涼は優しく愛理沙を包みこように抱いて、2人で眠りの中へ落ちていった。