公園で夜まで愛理沙と2人で高台から夜空を街の夜景を眺める。
これは変わらず、毎日の日課だ。
最近は、この公園の時間の時だけは、お互いに話さず、風景を眺めていることが多い。愛理沙はブランコで、涼はベンチの定位置だ。
でも、お互いに一緒にいるというだけで心が落ち着くのがわかる。なんとなく、愛理沙も同じ気持ちでいてくれていることが伝わってくる……そのことが嬉しい。
夜になって星空が瞬き始めた頃、2人で静かに立ち上がって、自転車に乗ってスーパーへ向かう。愛理沙の主義らしく、なるべく食材の買い置きはしない。
最近では2人でカーゴを押してスーパーの中を回るのが日課となっている。
「今日は天ぷら……涼は好き?」
「天ぷら…大好きだよ!」
「良かった」
慣れた手つきで、天ぷらの具材をカゴの中へと入れていく。タレのコーナーで天ぷらつゆを見つけた。
カゴに入れようとしたら、愛理沙にカゴから出され、元の場所に置かれる。
「天ぷらなんだろう? 天ぷらつゆが必要だよね」
「天ぷらつゆは私が作るからいいの……これも楽しみのうちだから」
天ぷらつゆまで手作り……今まで天ぷらつゆというのはスーパーで売っているものしかないと思っていた。
愛理沙は何でも、手間暇を惜しまず手作りしてくれる。将来は良い奥さんになると思う。
レジで支払いをして、エコバックに買った荷物を詰めて、愛理沙の自転車のカゴに入れる。この時に愛理沙の自転車を押すのは涼だ。すこしは役に立ちたい。
家に着くと、愛理沙がポケットから家の鍵を取り出してドアを開ける。そして2人で部屋の中へ入る。
1DKの涼の部屋で2人住むには狭い。愛理沙のために用意した家財用具がダイニングにも置かれている。
おもに、涼が手を触れてはいけない洋服類や下着類の入ったタンスはダイニングに置かれている。
「私も着替えるから、涼も着替えてね」
涼が自分の部屋へ入るとキッチリとフスマが閉められた。
涼は制服を脱いで、愛理沙に選んでもらったダークグレーのスウェットの上下に着替える。
「着替え終わったよ」
フスマを開けて愛理沙がにっこりと笑う。
愛理沙は薄いピンクのスウェットの上下に着替えて、その上からエプロンををしている。髪は束ねてポニーテールになっている。きれいな項が美しい。そして左右に揺れる髪が尻尾のようでとても可愛い。
「もう炊飯器のスタートは入れてあるから、後30分でご飯ができるからね。その間に天ぷらの用意をする」
涼がキッチンへ近づいて愛理沙の隣に立って、愛理沙の料理の手さばきを見る。
愛理沙はボールの中に小麦粉を入れて、少し片栗粉を入れて、卵を入れると、水で少しずつ溶かしながら天ぷらの衣の硬さを調整して、塩を少しいれて味を調える。すごく手際がいい。愛理沙の手は細くて指が長くてとてもきれいだ。
愛理沙は不思議な顔をして、首を傾げて涼を見る。
「どうしたの?」
「きれいな手をしてるなって思って……あまり愛理沙の手を見たことなかったなと思ってさ」
「アウ……手を褒められたのなんて初めて……恥ずかしいよ」
愛理沙は顔を真っ赤にして、何か独り言を呟いているが、涼の耳には聞こえない。
「愛理沙の将来のご主人さんは幸せだな。毎日、美人の愛理沙と暮らせて、美味しい食事も食べられるんだから」
「アウウウ……私は……その……将来、涼でも……ウウ」
愛理沙が照れて俯いて、口の中で何かを言っている。照れて恥ずかしがる愛理沙も可愛いな。
「もう……涼がいると料理ができないから、さきにお風呂に入って」
愛理沙が来てダイニングで一番変わったことは、小さな脱衣所ができたことだ。愛理沙が裸でいる時に間違ってフスマを開けてしまったら大事件になるし、その後にお互いに気まずくなる。お互いに恥ずかしい思いをしないための措置だ。
「わかった。サッとシャワーを浴びさせてもらう」
タンスから下着類とバスタオルを取り出して、カーテンでできた脱衣所の中へ入って、カーテンを閉めて涼は服を脱いで、風呂場へと入っていく。
愛理沙が毎日、掃除をしてくれるから、風呂場は見違えるように毎日ピカピカだ。
◇
シャワーを浴びて、髪をバスタオルで拭いて、カーテンを開けて脱衣所を出ると、丁度、愛理沙が天ぷらを揚げている所だった。きれいな手さばきで、次々と天ぷらが揚げられていく。愛理沙は上機嫌なのか、鼻歌を歌って、ポニーテールの尻尾が左右に揺れる。
「もうすぐ天ぷらできるから、テーブルに座って」
ダイニングテーブルの椅子に座って愛理沙を見つめる。
本当に絶世の美少女だよな。
きれいな眉、キリッとした二重、冷静で優しい瞳、きれいな鼻筋、大人びた唇、透き通るような白い肌、スタイルも抜群で手脚もきれいで長い。
こんな美少女と本当に一緒に暮らしていていいんだろうか。
涼は自分には勿体ない美少女だと思う。
「どうしたの?」
お味噌汁を涼の手前に起きながら、愛理沙が不思議な顔をする。
「愛理沙って、本当に美少女だと思ってさ。一緒に暮らせるなんて、俺には勿体ないと思って見てた」
「アウ……お料理を作っている最中に変なことを言わないで……お料理の手順を間違えちゃうよ……」
「ゴメン」
すぐに涼の目の前には天ぷらの盛り合わせ、お味噌汁、ご飯、天ぷらつゆ、お茶、お箸が置かれる。
そして愛理沙は対面の席について、2人で『いただきます』を言って、天ぷらを食べる。
衣がサクサクで、中はアツアツでホクホク。最高に美味しい。
「愛理沙の天ぷら、最高!」
「ありがとう……もっと一杯食べてね。いっぱいあるからね」
愛理沙と2人で食べる食事は、いつも美味しい。人と一緒に食べて、これほど美味しいと思ったことはない。
人と一緒に食事をすることが、こんなに楽しいとは思わなかった。
2人で和やかに食事を楽しむ。何も面白い話などしない。ただ一緒に食べているだけで楽しい。
「楽しいね……お料理がとても美味しい」
「俺もそう思ってたんだ」
料理を食べ終わって、後片付けを始める。
「俺が後片付けをしておくから、愛理沙はお風呂に入っておいでよ」
「それはダメ……涼が食器を洗ったら、泡がいっぱいついていて、きちんと洗えてないんだもん」
愛理沙と2人で片づけをする。愛理沙は手慣れていて、手さばきが早い。
涼は愛理沙が洗った食器を拭いて、食器棚へなおしていく。
「2人で後片付けをすると、すごく早く済むね」
「少しでも役に立ってるなら嬉しいよ」
「うん」
◇
既に愛理沙はシャワーを浴びて、白のパジャマに着替えている。涼もお揃いの黒のパジャマに着替えてベッドの中へ入る。
ベッドの隣に布団を敷いて、その上にペタンと愛理沙が座って涼と少し談笑をする。愛理沙から石鹸とシャンプーの良い香りが漂ってくる。
「今日も1日、楽しかったね。最近、このアパートに来てから私、楽しいことがいっぱいで嬉しい」
「そう言ってもらえて、俺も嬉しいよ」
「もう0時も回ったし、私、寝るね」
「ああ……俺も寝るよ……おやすみ」
「おやすみなさい」
部屋の電気を消して、布団へ入ると、すぐに愛理沙から寝息が聞こえる。
涼はしばらく、体を動かさないまま、愛理沙の寝ている姿を見守る。
すると寝ている愛理沙が苦しそうに眉をしかめる。
「ゴメンなさい……ゴメンなさい」
愛理沙が涼の家に来てから、毎晩、眠ると愛理沙はうなされている。
「パパがゴメンなさい……パパを許して……」
涼はベッドから、そっと起きて、愛理沙の眠っている手を両手で握る。
「大丈夫だよ。パパは許されたよ。パパは悪くないよ。だから愛理沙も悪くない。良い子だよ」
「うん……ありがとう……パパを許してくれて……私も良い子でいいの」
「愛理沙は良い子だよ……」
愛理沙は眠りながらにっこりと微笑むと、目から大粒の涙が頬を伝う。
これが毎日、続いているのだ。愛理沙の過去に何があったのか涼からは聞かない。しかし、よほどツライ過去があるのだろう。
涼はゆっくりと安心して愛理沙が寝静まるまえで愛理沙の手をしっかりと握り続ける。
これは変わらず、毎日の日課だ。
最近は、この公園の時間の時だけは、お互いに話さず、風景を眺めていることが多い。愛理沙はブランコで、涼はベンチの定位置だ。
でも、お互いに一緒にいるというだけで心が落ち着くのがわかる。なんとなく、愛理沙も同じ気持ちでいてくれていることが伝わってくる……そのことが嬉しい。
夜になって星空が瞬き始めた頃、2人で静かに立ち上がって、自転車に乗ってスーパーへ向かう。愛理沙の主義らしく、なるべく食材の買い置きはしない。
最近では2人でカーゴを押してスーパーの中を回るのが日課となっている。
「今日は天ぷら……涼は好き?」
「天ぷら…大好きだよ!」
「良かった」
慣れた手つきで、天ぷらの具材をカゴの中へと入れていく。タレのコーナーで天ぷらつゆを見つけた。
カゴに入れようとしたら、愛理沙にカゴから出され、元の場所に置かれる。
「天ぷらなんだろう? 天ぷらつゆが必要だよね」
「天ぷらつゆは私が作るからいいの……これも楽しみのうちだから」
天ぷらつゆまで手作り……今まで天ぷらつゆというのはスーパーで売っているものしかないと思っていた。
愛理沙は何でも、手間暇を惜しまず手作りしてくれる。将来は良い奥さんになると思う。
レジで支払いをして、エコバックに買った荷物を詰めて、愛理沙の自転車のカゴに入れる。この時に愛理沙の自転車を押すのは涼だ。すこしは役に立ちたい。
家に着くと、愛理沙がポケットから家の鍵を取り出してドアを開ける。そして2人で部屋の中へ入る。
1DKの涼の部屋で2人住むには狭い。愛理沙のために用意した家財用具がダイニングにも置かれている。
おもに、涼が手を触れてはいけない洋服類や下着類の入ったタンスはダイニングに置かれている。
「私も着替えるから、涼も着替えてね」
涼が自分の部屋へ入るとキッチリとフスマが閉められた。
涼は制服を脱いで、愛理沙に選んでもらったダークグレーのスウェットの上下に着替える。
「着替え終わったよ」
フスマを開けて愛理沙がにっこりと笑う。
愛理沙は薄いピンクのスウェットの上下に着替えて、その上からエプロンををしている。髪は束ねてポニーテールになっている。きれいな項が美しい。そして左右に揺れる髪が尻尾のようでとても可愛い。
「もう炊飯器のスタートは入れてあるから、後30分でご飯ができるからね。その間に天ぷらの用意をする」
涼がキッチンへ近づいて愛理沙の隣に立って、愛理沙の料理の手さばきを見る。
愛理沙はボールの中に小麦粉を入れて、少し片栗粉を入れて、卵を入れると、水で少しずつ溶かしながら天ぷらの衣の硬さを調整して、塩を少しいれて味を調える。すごく手際がいい。愛理沙の手は細くて指が長くてとてもきれいだ。
愛理沙は不思議な顔をして、首を傾げて涼を見る。
「どうしたの?」
「きれいな手をしてるなって思って……あまり愛理沙の手を見たことなかったなと思ってさ」
「アウ……手を褒められたのなんて初めて……恥ずかしいよ」
愛理沙は顔を真っ赤にして、何か独り言を呟いているが、涼の耳には聞こえない。
「愛理沙の将来のご主人さんは幸せだな。毎日、美人の愛理沙と暮らせて、美味しい食事も食べられるんだから」
「アウウウ……私は……その……将来、涼でも……ウウ」
愛理沙が照れて俯いて、口の中で何かを言っている。照れて恥ずかしがる愛理沙も可愛いな。
「もう……涼がいると料理ができないから、さきにお風呂に入って」
愛理沙が来てダイニングで一番変わったことは、小さな脱衣所ができたことだ。愛理沙が裸でいる時に間違ってフスマを開けてしまったら大事件になるし、その後にお互いに気まずくなる。お互いに恥ずかしい思いをしないための措置だ。
「わかった。サッとシャワーを浴びさせてもらう」
タンスから下着類とバスタオルを取り出して、カーテンでできた脱衣所の中へ入って、カーテンを閉めて涼は服を脱いで、風呂場へと入っていく。
愛理沙が毎日、掃除をしてくれるから、風呂場は見違えるように毎日ピカピカだ。
◇
シャワーを浴びて、髪をバスタオルで拭いて、カーテンを開けて脱衣所を出ると、丁度、愛理沙が天ぷらを揚げている所だった。きれいな手さばきで、次々と天ぷらが揚げられていく。愛理沙は上機嫌なのか、鼻歌を歌って、ポニーテールの尻尾が左右に揺れる。
「もうすぐ天ぷらできるから、テーブルに座って」
ダイニングテーブルの椅子に座って愛理沙を見つめる。
本当に絶世の美少女だよな。
きれいな眉、キリッとした二重、冷静で優しい瞳、きれいな鼻筋、大人びた唇、透き通るような白い肌、スタイルも抜群で手脚もきれいで長い。
こんな美少女と本当に一緒に暮らしていていいんだろうか。
涼は自分には勿体ない美少女だと思う。
「どうしたの?」
お味噌汁を涼の手前に起きながら、愛理沙が不思議な顔をする。
「愛理沙って、本当に美少女だと思ってさ。一緒に暮らせるなんて、俺には勿体ないと思って見てた」
「アウ……お料理を作っている最中に変なことを言わないで……お料理の手順を間違えちゃうよ……」
「ゴメン」
すぐに涼の目の前には天ぷらの盛り合わせ、お味噌汁、ご飯、天ぷらつゆ、お茶、お箸が置かれる。
そして愛理沙は対面の席について、2人で『いただきます』を言って、天ぷらを食べる。
衣がサクサクで、中はアツアツでホクホク。最高に美味しい。
「愛理沙の天ぷら、最高!」
「ありがとう……もっと一杯食べてね。いっぱいあるからね」
愛理沙と2人で食べる食事は、いつも美味しい。人と一緒に食べて、これほど美味しいと思ったことはない。
人と一緒に食事をすることが、こんなに楽しいとは思わなかった。
2人で和やかに食事を楽しむ。何も面白い話などしない。ただ一緒に食べているだけで楽しい。
「楽しいね……お料理がとても美味しい」
「俺もそう思ってたんだ」
料理を食べ終わって、後片付けを始める。
「俺が後片付けをしておくから、愛理沙はお風呂に入っておいでよ」
「それはダメ……涼が食器を洗ったら、泡がいっぱいついていて、きちんと洗えてないんだもん」
愛理沙と2人で片づけをする。愛理沙は手慣れていて、手さばきが早い。
涼は愛理沙が洗った食器を拭いて、食器棚へなおしていく。
「2人で後片付けをすると、すごく早く済むね」
「少しでも役に立ってるなら嬉しいよ」
「うん」
◇
既に愛理沙はシャワーを浴びて、白のパジャマに着替えている。涼もお揃いの黒のパジャマに着替えてベッドの中へ入る。
ベッドの隣に布団を敷いて、その上にペタンと愛理沙が座って涼と少し談笑をする。愛理沙から石鹸とシャンプーの良い香りが漂ってくる。
「今日も1日、楽しかったね。最近、このアパートに来てから私、楽しいことがいっぱいで嬉しい」
「そう言ってもらえて、俺も嬉しいよ」
「もう0時も回ったし、私、寝るね」
「ああ……俺も寝るよ……おやすみ」
「おやすみなさい」
部屋の電気を消して、布団へ入ると、すぐに愛理沙から寝息が聞こえる。
涼はしばらく、体を動かさないまま、愛理沙の寝ている姿を見守る。
すると寝ている愛理沙が苦しそうに眉をしかめる。
「ゴメンなさい……ゴメンなさい」
愛理沙が涼の家に来てから、毎晩、眠ると愛理沙はうなされている。
「パパがゴメンなさい……パパを許して……」
涼はベッドから、そっと起きて、愛理沙の眠っている手を両手で握る。
「大丈夫だよ。パパは許されたよ。パパは悪くないよ。だから愛理沙も悪くない。良い子だよ」
「うん……ありがとう……パパを許してくれて……私も良い子でいいの」
「愛理沙は良い子だよ……」
愛理沙は眠りながらにっこりと微笑むと、目から大粒の涙が頬を伝う。
これが毎日、続いているのだ。愛理沙の過去に何があったのか涼からは聞かない。しかし、よほどツライ過去があるのだろう。
涼はゆっくりと安心して愛理沙が寝静まるまえで愛理沙の手をしっかりと握り続ける。