2人でキャリーバッグを持って涼のアパートまで戻ってきた。鍵を開けて涼がキャリーバックをダイニングへと運びいれる。そしてダイニングの隅にキャリーバックを2つ置く。
その間、愛理沙は玄関に立ったまま、靴も脱ごうとしない。
「何してるんだ? 入ってきなよ……今日からここが愛理沙の家じゃないか」
「本当にいいの?」
「今更、何を言ってるの? 他に行く所でもあるの?」
「ううん……行く所ない……住むところないの」
愛理沙がまた涙をこぼして、頬を濡らす。
公園から涼のアパートへ来るまでの間も、愛理沙は情緒不安定になって、時々…涙をこぼして涼を困らせた。
愛理沙に泣かれるのは正直ツライ。
「何も気にしなくていいから……自分の家だと思って気軽に暮らしていい」
「―――お金も持っていないし」
「大丈夫……俺、少しは蓄えがあるんだ。だから愛理沙と暮すお金ぐらいは十分に持ってる。贅沢はできないけどね」
お金の話しは本当だ。
両親…家族が事故で他界したことで、涼には多額の保険金が入っている。未成年後見人の三崎さんが、保険金の半分を管理してくれているが、残り半分は涼が管理している。だから愛理沙が暮らしを心配する必要はない。
「お邪魔します」
「違うよ……ただいまだよ」
「――――ただいま……」
愛理沙はダイニングへ入ってくると、いきなり床に正座をして、三つ指をついて頭を下げる。
「これからお世話になります。末永くよろしくお願いします」
そ……それは結婚の時に言う言葉だよね……完全に間違って覚えてるよ。
涼はその言葉を聞いて、自分の耳が真っ赤に火照るのを感じる。
「愛理沙……そんなに緊張する必要ないんだから……気軽に友達の家で同居するつもりでいてよ。そのほうが俺も気軽でいいからな。そんなに緊張されると……俺のほうも緊張しちゃうからさ」
「はい…わかりました」
全然、分かってないよ……初めての同居だから、愛理沙が緊張するのもわかる。
「涼…聞きたかったんだけど……私達って仮の彼氏と彼女よね? 付き合ってもいないわよね?」
あ…そのことについて忘れてた。愛理沙の家に行って、あまりの叔母さんのいいようにムカッと感情的になって勢いで愛理沙を連れてきてしまった。
「そうだね……愛理沙と俺は、仮の彼女と彼氏のままでいいよ。俺も愛理沙の過去に踏み入ろうとは思わないし、俺も自分からあまり過去のことを言いたくないから」
涼と愛理沙の心の距離は、いつもの公園で一緒にいる距離が丁度いい。あまり心の距離を近くしないほうが良いだろう。互いに人に言えない過去を持っているのだから。お互いに秘密にしておいたほうが良いこともある。
「ァゥ……そんなことを言ってるんじゃないのに……本当は涼の彼女になっても……」
愛理沙がすごく小さな声で何かを呟いているが、涼の耳には聞こえない。
愛理沙は顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに照れて俯いてしまっている。
「愛理沙と一緒にベッドで寝るわけにはいかないから……街まで行って、布団を買いに行こう。後、家に必要な家財道具も買いに行こう」
「――――そんな……そこまで涼にしてもらうなんて悪いわ」
「何を言ってるんだ。これから同居人じゃないか……これぐらいはさせてくれよ」
「それじゃあ、家事全般は私がするね……涼だと部屋は散らかるし、片付けや掃除も下手だし、料理もできないし」
「そういうばそうだな……これからは毎日、愛理沙の料理が食べられるのか……冷えた弁当を食わなくてもいいんだな……すごく嬉しい。ありがとうな」
それを聞いて、愛理沙は嬉しそうな顔をで笑んだ。
「涼……気づいてないと思うけど、私達の場合、同居って言わないよ……同棲っていうのよ」
「え!同棲!」
涼はずっと同居と思っていた……いきなりの愛理沙からの同棲宣言に目の前がグラグラと揺れる。
高校生で……同棲。
まだ彼女もいないのに、こんな美少女と同棲していいのか。
「私……涼とだったら同棲してもいい……涼だったら安心だから」
1人の男性として美少女と同棲して、安心されて喜ぶべきなんだろうか。悲しむべきなんだろうか。涼は心の中で、愛理沙の言葉を聞いて動揺を隠せない。
「とにかく、街に行って、必要な家財道具や布団を買って、今日中に配達してもらうようにしないといけない……時間的に早く行って、頼み込まないと間に合わない……愛理沙、必要なモノを書きだして」
涼はノートとペンを私室から持ってきて、急いで愛理沙に必要なモノを書きだしてもらう。愛理沙は色々なモノを書きだしているが……なぜ、涼のパジャマまで買い物リストに載っている。
「今日、街から戻ってきたら、料理をするね……涼の大好物の唐揚げにするから」
「おお――! 愛理沙の唐揚げ、すごく美味いんだよな。是非、お願いするよ」
「うん…楽しみにしててね」
愛理沙と涼は互いに顔を見合わせて微笑み合う。
愛理沙のメモが終わると、2人で玄関を出て家の鍵をかける。
「そういえば、部屋の鍵も愛理沙専用の鍵がいるね」
「私に合い鍵をくれるの……本当の同棲みたい」
その言葉を聞いて涼の顔は真っ赤に染まる。同棲という言葉を言われると恥ずかしい。言葉を発した愛理沙のほうも、恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯いている。
「とにかく、時間がない。急いで街まで行こう」
「うん…ありがとう! 涼!」
2人で並んで仲良く街まで歩いていく。
2人の顔には陰りはない。
2人は満面の笑みを浮かべて談笑しながら街へと向かった。
空は2人の心のように、青く遠くまで澄みわたっていた。
その間、愛理沙は玄関に立ったまま、靴も脱ごうとしない。
「何してるんだ? 入ってきなよ……今日からここが愛理沙の家じゃないか」
「本当にいいの?」
「今更、何を言ってるの? 他に行く所でもあるの?」
「ううん……行く所ない……住むところないの」
愛理沙がまた涙をこぼして、頬を濡らす。
公園から涼のアパートへ来るまでの間も、愛理沙は情緒不安定になって、時々…涙をこぼして涼を困らせた。
愛理沙に泣かれるのは正直ツライ。
「何も気にしなくていいから……自分の家だと思って気軽に暮らしていい」
「―――お金も持っていないし」
「大丈夫……俺、少しは蓄えがあるんだ。だから愛理沙と暮すお金ぐらいは十分に持ってる。贅沢はできないけどね」
お金の話しは本当だ。
両親…家族が事故で他界したことで、涼には多額の保険金が入っている。未成年後見人の三崎さんが、保険金の半分を管理してくれているが、残り半分は涼が管理している。だから愛理沙が暮らしを心配する必要はない。
「お邪魔します」
「違うよ……ただいまだよ」
「――――ただいま……」
愛理沙はダイニングへ入ってくると、いきなり床に正座をして、三つ指をついて頭を下げる。
「これからお世話になります。末永くよろしくお願いします」
そ……それは結婚の時に言う言葉だよね……完全に間違って覚えてるよ。
涼はその言葉を聞いて、自分の耳が真っ赤に火照るのを感じる。
「愛理沙……そんなに緊張する必要ないんだから……気軽に友達の家で同居するつもりでいてよ。そのほうが俺も気軽でいいからな。そんなに緊張されると……俺のほうも緊張しちゃうからさ」
「はい…わかりました」
全然、分かってないよ……初めての同居だから、愛理沙が緊張するのもわかる。
「涼…聞きたかったんだけど……私達って仮の彼氏と彼女よね? 付き合ってもいないわよね?」
あ…そのことについて忘れてた。愛理沙の家に行って、あまりの叔母さんのいいようにムカッと感情的になって勢いで愛理沙を連れてきてしまった。
「そうだね……愛理沙と俺は、仮の彼女と彼氏のままでいいよ。俺も愛理沙の過去に踏み入ろうとは思わないし、俺も自分からあまり過去のことを言いたくないから」
涼と愛理沙の心の距離は、いつもの公園で一緒にいる距離が丁度いい。あまり心の距離を近くしないほうが良いだろう。互いに人に言えない過去を持っているのだから。お互いに秘密にしておいたほうが良いこともある。
「ァゥ……そんなことを言ってるんじゃないのに……本当は涼の彼女になっても……」
愛理沙がすごく小さな声で何かを呟いているが、涼の耳には聞こえない。
愛理沙は顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに照れて俯いてしまっている。
「愛理沙と一緒にベッドで寝るわけにはいかないから……街まで行って、布団を買いに行こう。後、家に必要な家財道具も買いに行こう」
「――――そんな……そこまで涼にしてもらうなんて悪いわ」
「何を言ってるんだ。これから同居人じゃないか……これぐらいはさせてくれよ」
「それじゃあ、家事全般は私がするね……涼だと部屋は散らかるし、片付けや掃除も下手だし、料理もできないし」
「そういうばそうだな……これからは毎日、愛理沙の料理が食べられるのか……冷えた弁当を食わなくてもいいんだな……すごく嬉しい。ありがとうな」
それを聞いて、愛理沙は嬉しそうな顔をで笑んだ。
「涼……気づいてないと思うけど、私達の場合、同居って言わないよ……同棲っていうのよ」
「え!同棲!」
涼はずっと同居と思っていた……いきなりの愛理沙からの同棲宣言に目の前がグラグラと揺れる。
高校生で……同棲。
まだ彼女もいないのに、こんな美少女と同棲していいのか。
「私……涼とだったら同棲してもいい……涼だったら安心だから」
1人の男性として美少女と同棲して、安心されて喜ぶべきなんだろうか。悲しむべきなんだろうか。涼は心の中で、愛理沙の言葉を聞いて動揺を隠せない。
「とにかく、街に行って、必要な家財道具や布団を買って、今日中に配達してもらうようにしないといけない……時間的に早く行って、頼み込まないと間に合わない……愛理沙、必要なモノを書きだして」
涼はノートとペンを私室から持ってきて、急いで愛理沙に必要なモノを書きだしてもらう。愛理沙は色々なモノを書きだしているが……なぜ、涼のパジャマまで買い物リストに載っている。
「今日、街から戻ってきたら、料理をするね……涼の大好物の唐揚げにするから」
「おお――! 愛理沙の唐揚げ、すごく美味いんだよな。是非、お願いするよ」
「うん…楽しみにしててね」
愛理沙と涼は互いに顔を見合わせて微笑み合う。
愛理沙のメモが終わると、2人で玄関を出て家の鍵をかける。
「そういえば、部屋の鍵も愛理沙専用の鍵がいるね」
「私に合い鍵をくれるの……本当の同棲みたい」
その言葉を聞いて涼の顔は真っ赤に染まる。同棲という言葉を言われると恥ずかしい。言葉を発した愛理沙のほうも、恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯いている。
「とにかく、時間がない。急いで街まで行こう」
「うん…ありがとう! 涼!」
2人で並んで仲良く街まで歩いていく。
2人の顔には陰りはない。
2人は満面の笑みを浮かべて談笑しながら街へと向かった。
空は2人の心のように、青く遠くまで澄みわたっていた。