えっ?
課長が就任を断っていた!?

「どうしてですか?勿体ない」

普通なら出世するのは、名誉な事なのに…。
むしろ、それを目標に頑張っているはずだ。

「ほら。課長の本職は、住職だからよ。
責任のある職に就いたら
住職の仕事に影響するからって言っていたわ。
今でも、お父さんに小言を言われているらしいし」

そうなんだ……。
課長がここに就職してくれたからこうやって
出会えたのに。陰でそんな苦労をしていたんだ。
心配ばかりさせているため何だか
申し訳ない気持ちになった。

「あ…それと課長が向こうで代理をしている間は、
代わりに違う人が来るみたいよ!
どんな人か分からないけど海外営業部から
来るらしいから気になるわよね」

「えっ?そうなんですか?」

戻って来る間だけの代理課長か。
一体どんな人だろうか?怖い人だと嫌だな。
課長が居ないと不安になってくるし心細い。
改めて課長の大切さを理解した。

そんな気持ちを抱えたまま翌日。
本当にしばらくの間。
新しい課長を迎える事になったのだが

「海外営業部から来ました。志藤静です。
短い期間だけですが私が来たからには、
この甘い部署を徹底して直していくつもりです!」

来た早々にそう言ってくるではないか。
現れた新しい上司は、女性だった。
この部署を徹底的に直すって……。
課長代理の意見に驚いてしまった。

「私は、あの人…西園寺君のやり方は、
甘いと思っています。
あんなやり方では、部下のためにならないわ。
ですので、私の指示するやり方でお願いします」

ハッキリとしたキツい口調でそう言ってきた。
私は、驚きのあまり言葉を無くしてしまった。
まさか、あんな風に課長を悪く言う人がいるなんて
だけど、しばらくして腹が立ってくる。

課長のやり方は、甘くない。
相手の気持ちを読み適切なアドバイスと
優しさをくれる立派な方だわ。

「ち、違います。課長は、信頼が出来る上司です。
甘くなんてありません」