高校二年の二学期が始まってすぐの頃、同じクラスで隣の席だった三ツ矢晴輝(みつやはるき)くんと管野雨愛(かんのうみ)は両思いになる

晴輝に言わされた感じはあるけど雨愛が好きと先に言ったのは事実だし……

でも返事はごめんだった、理由は……晴輝の両親は離婚していて父親に育てられた

その父親が亡くなった

後見人の叔父が近くにいるがなるべく迷惑はかけたくないとそのまま一人暮らしをしている

サッカー部だった晴輝は遠征が多い部活を辞めて生活のために放課後はファミレスでバイトを始める

母親は葬儀には来てくれたが今新しい家族になろうとしている人がいるらしくあまり母親の記憶もない晴輝はそのままの生活を選んだのだった

そういう事情もあり今は両思いだけどカレカノではない状態なのだ

バイトは火曜日が休みでその日は二人で一緒に帰り雨愛の家でもあり晴輝の父親のお墓がある寺へ一緒にお墓参りをしてしばらくたわいもない話をして帰っていくという日常

それが一年前のこと……

今二人は高校三年生の二学期を向かえていた

晴輝と雨愛は一年、二年と同じクラスだったが晴輝が進路を就職コースに変更したためクラスは分かれて、校舎も違い学校ではあまり会えることは少なくなっていた

二学期が始まって最初の火曜日

‘今日私日直だから少し遅くなる、先にお寺行ってていいよ’

雨愛は晴輝にメールを送り、学級日誌を書き始める

「雨愛」

「晴輝くん」

「教室入っていい?」

「いいよ」

教室には何名か残っていて友達の多い晴輝は手を振っていた

雨愛の前の席に椅子をまたいで座る

「もう少しかかるよ?」

「いいよ、暑くてさ~中で待とうと思って」

「だから先に帰っていいってメールしたのに」

「まあ、貴重な火曜日だしいいじゃん(笑)」

晴輝はニカッと笑った

「うっ、まあそうだけど……」

そんな笑顔で言われると照れる……

雨愛は下を向いて日誌を書いていく

「雨愛って綺麗な字書くのな」

「んー昔から習字は習わされてたからね、一応御朱印も書けるようにって」

「すげー、書けんの?」

「夏休み書いたよ、忙しいからね」

「ここ、字間違ってる」

晴輝に指摘された

「えっ、本当だ、もう~」

雨愛は消しゴムで消していく

字を褒められて集中できてなかった

教室のドアが開いた

「あっ、晴輝じゃん」

「祐介、久しぶり部活は?」

「昨日捻挫してさ、ちょっと二、三日休むんだよ、今顧問に言ってきたんだ」

晴輝は席を立って祐介の方へ寄っていく

小坂祐介(こさかゆうすけ)は二年の時に晴輝と雨愛と同じクラスでサッカー部

晴輝は部活を辞めたものの家の事情をわかってくれてて、今でも部員とは仲良くしている