「隆司、これ見て。模様が描かれているよ」
樹里の皿を見る。
皿の上にはソースで模様が描かれていた。
「すごく上手いよね」
「そうだね」
樹里が一番外側のナイフとフォークを取るのが見えた。
そうか。一番外側から使うのか。
フォークとナイフを取り、テリーヌを食べる。すごく柔らかく、野菜と肉の旨みが溶け合い美味しい。
「生まれて初めて食べたけど、これ好きだ」
僕は満面の笑みを浮かべる。
「そんなに喜んでくれたら連れて来た甲斐があるわ。ちょっとごめん」
樹里がフォークとナイフを揃えて食べ終わった皿の上に置くと、椅子にナプキンを置いて立ち上がろうとする。
スタッフがきてすぐ後ろに立ち、椅子を引く。
樹里は僕をチラッと見て皿を見る。
椅子の左側に出て、部屋から出て行く。
食べ終わると樹里がしているようにナイフとフォークを揃えて皿の上に置く。
スタッフが入ってきて僕と樹里の食べ終わった皿を片付けて行った。
なんとなくだけど、樹里は僕が恥をかかないようにそれとなく教えてくれてるような気がする。
樹里が戻ってくると、前菜の後に野菜のポタージュ、舌平目のムニエル、牛フィレ肉のロッシーニー風と続いて、デザートはクリスマスだからということでブッシュ・ド・ノエルが出てきた。
最後にコーヒーと小菓子としてチョコレートやマシュマロが出てくる。
「もうお腹いっぱいだ。」
どれも食べたことがない料理に満足した。
「美味しかった?」
樹里に聞かれ、僕は頷いた。
「凄く美味しかった。特に、フォアグラが美味しかった。聞いたことはあったけど、食べたことなかったんだ。全然臭みがなくて驚いたよ」
「安物は臭みがあるけど、ここのはいいフォアグラを使っているから臭みはほとんどないわ。そんなに喜んでくれてお兄ちゃんに奢らせた甲斐があったわ」
「どういうこと?」
「慰謝料よ。怪我をさせたんだから治療費だけじゃダメよねって言って、ここの代金を払わせたのよ。先払いしているからお金はいらないから」
「悪いよ」
樹里のお兄さんには治療費をもらっている。これ以上何かしてもらうわけにはいかない。
「大丈夫よ。お兄ちゃんにとってこれぐらいのお金は大したことないわ」
樹里が笑った。
いくらお兄さんにとっては大した金額でないにしても、そこまでしてもらっては悪いような気がする。
だが、この店はかなり高そうだ。今の僕ではとても払えそうにもない。
帰ってから父さんたちと相談しよう。
僕と樹里はスタッフたちに見送られて店を出た。
時計を見ると、もう3時を過ぎている。そろそろクリスマス祭も終わる時間だ。
紀夫と渡辺さんのことが気になり始めた。あの後、二人はどうなったんだろう。
「紀夫と渡辺さんはどうしたかな?」
「大丈夫よ。あの2人は、今頃手を繋いで仲良く帰ってるわよ。山崎君の前のカノジョも可愛いって感じだったから、きっと可愛い子が好きなのよ。真紀は性格はきついけど、顔は可愛いからきっと山崎君好みよ。」
樹里が自信満々で言う。
たしかに紀夫は小学生の頃から好きになるのは可愛いという感じの子ばかっりだった。
「でも、渡辺さんが紀夫のことを好きかどうかわからないじゃないか」
渡辺さんは性格はともかくとして可愛いし、頭も良く、いつもテストでは上位10位に入っている。
ゴリラのような顔をした陸上だけが取り柄の紀夫を好きになるとは思えない。
「大丈夫よ」
樹里が自信ありげに言う。
「真紀はわたしと言い合いしている時でもチラチラ山崎君を見ていたんだから、相当意識してるわよ。2人きりにしてあげたんだから上手くいってるはずよ」
そうだったのか。それは分からなかった。
「でも、あの演技すごかったよ。樹里は渡辺さんのことが嫌いだと思ってたのに」
あの渡辺さんにキスしようとした演技はすごかった。
見ているこっちまでドキドキした。
「別に嫌いじゃないわよ。転校してきたばかりのわたしに気を遣って声をかけてくれたし。いい人だなあとは思っていたわよ。ただ、お互い気が強いから言い合いになっちゃうのよね。あれも最初は演技のつもりだったけど、近くで見た真紀の顔があんまりにも可愛いかったから、本当にキスしちゃおうかなんて思っちゃった」
樹里が危ないことを言う。
「樹里。ひょっとして百合?」
「その気があることは否定しない」
その割には女子に嫌われているけど。
「じゃあ、僕とはどういうつもりであんなことしたの?」
あれは本当に演技だったんだろうか?
「どう思う?」
じとーっとした目で僕を見る。
「……」
分からない。
「また、明日ね」
樹里は何も答えず、手を振ってマンションの中に入っていく。
意地の悪い女だ。
でも、樹里が好きだ。僕は自分の気持ちをはっきり自覚した。
樹里の皿を見る。
皿の上にはソースで模様が描かれていた。
「すごく上手いよね」
「そうだね」
樹里が一番外側のナイフとフォークを取るのが見えた。
そうか。一番外側から使うのか。
フォークとナイフを取り、テリーヌを食べる。すごく柔らかく、野菜と肉の旨みが溶け合い美味しい。
「生まれて初めて食べたけど、これ好きだ」
僕は満面の笑みを浮かべる。
「そんなに喜んでくれたら連れて来た甲斐があるわ。ちょっとごめん」
樹里がフォークとナイフを揃えて食べ終わった皿の上に置くと、椅子にナプキンを置いて立ち上がろうとする。
スタッフがきてすぐ後ろに立ち、椅子を引く。
樹里は僕をチラッと見て皿を見る。
椅子の左側に出て、部屋から出て行く。
食べ終わると樹里がしているようにナイフとフォークを揃えて皿の上に置く。
スタッフが入ってきて僕と樹里の食べ終わった皿を片付けて行った。
なんとなくだけど、樹里は僕が恥をかかないようにそれとなく教えてくれてるような気がする。
樹里が戻ってくると、前菜の後に野菜のポタージュ、舌平目のムニエル、牛フィレ肉のロッシーニー風と続いて、デザートはクリスマスだからということでブッシュ・ド・ノエルが出てきた。
最後にコーヒーと小菓子としてチョコレートやマシュマロが出てくる。
「もうお腹いっぱいだ。」
どれも食べたことがない料理に満足した。
「美味しかった?」
樹里に聞かれ、僕は頷いた。
「凄く美味しかった。特に、フォアグラが美味しかった。聞いたことはあったけど、食べたことなかったんだ。全然臭みがなくて驚いたよ」
「安物は臭みがあるけど、ここのはいいフォアグラを使っているから臭みはほとんどないわ。そんなに喜んでくれてお兄ちゃんに奢らせた甲斐があったわ」
「どういうこと?」
「慰謝料よ。怪我をさせたんだから治療費だけじゃダメよねって言って、ここの代金を払わせたのよ。先払いしているからお金はいらないから」
「悪いよ」
樹里のお兄さんには治療費をもらっている。これ以上何かしてもらうわけにはいかない。
「大丈夫よ。お兄ちゃんにとってこれぐらいのお金は大したことないわ」
樹里が笑った。
いくらお兄さんにとっては大した金額でないにしても、そこまでしてもらっては悪いような気がする。
だが、この店はかなり高そうだ。今の僕ではとても払えそうにもない。
帰ってから父さんたちと相談しよう。
僕と樹里はスタッフたちに見送られて店を出た。
時計を見ると、もう3時を過ぎている。そろそろクリスマス祭も終わる時間だ。
紀夫と渡辺さんのことが気になり始めた。あの後、二人はどうなったんだろう。
「紀夫と渡辺さんはどうしたかな?」
「大丈夫よ。あの2人は、今頃手を繋いで仲良く帰ってるわよ。山崎君の前のカノジョも可愛いって感じだったから、きっと可愛い子が好きなのよ。真紀は性格はきついけど、顔は可愛いからきっと山崎君好みよ。」
樹里が自信満々で言う。
たしかに紀夫は小学生の頃から好きになるのは可愛いという感じの子ばかっりだった。
「でも、渡辺さんが紀夫のことを好きかどうかわからないじゃないか」
渡辺さんは性格はともかくとして可愛いし、頭も良く、いつもテストでは上位10位に入っている。
ゴリラのような顔をした陸上だけが取り柄の紀夫を好きになるとは思えない。
「大丈夫よ」
樹里が自信ありげに言う。
「真紀はわたしと言い合いしている時でもチラチラ山崎君を見ていたんだから、相当意識してるわよ。2人きりにしてあげたんだから上手くいってるはずよ」
そうだったのか。それは分からなかった。
「でも、あの演技すごかったよ。樹里は渡辺さんのことが嫌いだと思ってたのに」
あの渡辺さんにキスしようとした演技はすごかった。
見ているこっちまでドキドキした。
「別に嫌いじゃないわよ。転校してきたばかりのわたしに気を遣って声をかけてくれたし。いい人だなあとは思っていたわよ。ただ、お互い気が強いから言い合いになっちゃうのよね。あれも最初は演技のつもりだったけど、近くで見た真紀の顔があんまりにも可愛いかったから、本当にキスしちゃおうかなんて思っちゃった」
樹里が危ないことを言う。
「樹里。ひょっとして百合?」
「その気があることは否定しない」
その割には女子に嫌われているけど。
「じゃあ、僕とはどういうつもりであんなことしたの?」
あれは本当に演技だったんだろうか?
「どう思う?」
じとーっとした目で僕を見る。
「……」
分からない。
「また、明日ね」
樹里は何も答えず、手を振ってマンションの中に入っていく。
意地の悪い女だ。
でも、樹里が好きだ。僕は自分の気持ちをはっきり自覚した。