「澤田君は私みたいなのは嫌いでしょう?」
「えっ」
急に何を言うんだ。
今そんなこと関係ないじゃないか。
「どうなの? 好き? 嫌い?」
嫌いだ。自分勝手で責任感のない石野さんみたいなタイプは大嫌いだ。
「好きではないかな」
だが、面と向かって女子に嫌いとは言えない。
「じゃあ、私なんかと付き合うのはすごく嫌でしょう?」
いやだ。絶対いやだ。こんな女子と付き合ったら、振り回されるだけ振り回されるに決まっている。
そんなのはごめんだ。
「そ、そうかも」
でも、僕は気が弱い。やっぱりそうだとははっきり言えない。
「そう。だったら、私と付き合ってくれたら、図書当番してあげる」
石野さんはとんでもないことを言い出す。
「えー」
僕だけでなく周りで聞いていた生徒からも驚きの声が上がった。
「なんで僕が石野さんと付き合わないといけないんだ。図書当番となんの関係があるかわからない。それに石野さんは僕なんかにまったく興味がないでしょう。それなのになんで付き合わないといけないの?」
顔を背けるぐらい興味がない男と付き合おうという石野さんの気持ちがわからない。
「嫌がらせ」
低い声でボソっと言った。
「嫌がらせ?」
なんで僕が石野さんから嫌がらせをされないといけないんだ。
「澤田君は嫌なことを我慢してやっている人もいるんだから、私も嫌なことを我慢してやるのが公平だと言ったわよね」
そんなようなことを言ったような気がする。
僕は頷いた。
「じゃあ、澤田君の言うとおりに私が図書当番をしたら、嫌なことを我慢して私はすることになるわ。でも、澤田君は図書当番することは嫌じゃないんだよね」
たしかに嫌じゃない。僕はまた頷く。
「それじゃあ澤田君は嫌なことをやってないじゃない。私には嫌なことを我慢してやらせといて自分は嫌なことをしないのは不公平じゃない?」
石野さんの綺麗な顔が必要以上に近づいてくる。
ドギマギしてしまい、冷静に考えられなくなってくる。
「それで嫌がらせで僕と付き合うというの?」
石野さんの言い分には納得ができない。
「そうよ。私が嫌なことを我慢してするんだから、澤田くんにも嫌なことを我慢してやって欲しいわ。そうじゃないと不公平なんでしょう。違う? 澤田君はそう言ったわよね。私の言っていること間違っている? どこか間違っている?」
さらに石野さんが顔を近づけてくる。
上から見下ろされるだけでも威圧感があるのに、さらに美人顔を近づけられるとドキドキしてしまい、頭がうまく働かない。
「僕が石野さんと付き合えば不公平じゃないっていうこと?」
石野さんの理屈は絶対おかしいんだが……。
「そうよ。澤田君は私と付き合うのは嫌なんでしょう? 私に嫌なことをさせる以上澤田君も嫌なことをしてよ。私と付き合う? それとも私にだけ不公平なことを押し付けて知らん顔するわけ? 澤田君はそれで平気なの? 澤田君はそんな人なの?」
石野さんは畳み掛けるように言ってくる。
ダメだ。
いくら考えても石野さんの言い分のどこが間違っているのかわからない。
付き合うことを断ったら、たぶん『当番をしない』と石野さんは言うだろう。
別にそれで司書の先生に駄目でしたと言えば、先生は何も言わないだろう。
だが、ちゃんとしている人がいるのに自分はしたくないからしないという理屈をどうしても許すことができない。
僕が我慢すればいいんだ。
僕は女子に気に入られるような話をすることもできないし、イケメンでもない。
なんの取り柄もない僕に石野さんはすぐ飽きて別れるって言うだろう。
少しの間辛抱すればいいんだ。
それぐらいなら我慢できる。
「わかった。付き合うよ。その代わり当番と委員会には必ず出てよ」
石野さんが不満そうな顔をしている。
石野さんの言う通りにすると言っているのに何が不満なんだろう。
「別に無理して付き合ってもらわなくてもいいわよ。わたしは別に図書当番なんかしたくないんだから。澤田君がわたしと付き合いたいって言うなら別だけど」
僕なんかに自分から付き合ってくれって言うのはプライドが許さないということか。
もうこうなりゃヤケだ。
「石野さん、僕と付き合ってください」
「いいわよ」
石野さんがニコッと笑った。
これで断られたら、殴ってやろうかと思った。
もちろんそんなことは僕には出来ないだろうけど。
「じゃあ、今日は当番だから必ず図書室に行ってよ」
僕がそう言うと、石野さんが突然手を出した。
握手かな?
石野さんの手を握った。
「何してるの?」
不思議そうに僕を見る。
「握手」
「なんで握手をしないといけないの。バカじゃないの? 私と付き合うんでしょ。どうやって連絡し合うのよ!!」
アドレスとか携帯の番号を教えろっていうことね。
だが、スマホも書くものも持っていない。
「ごめん。書くもの持ってないよ」
「ここに書いて」
石野さんは何かのノートの一番後ろを開けると、シャーペンを僕に渡した。
携帯の番号とメールアドレスを書いて渡す。
「私のは後でメールするわ」
石野さんはそう言うと、用事は終わったと言わんばかりに机に突っ伏してしまう。
なぜこうなったんだろう。全く理解できない。
極度の緊張と精神的疲労で、フラフラしながら教室を出た。
「えっ」
急に何を言うんだ。
今そんなこと関係ないじゃないか。
「どうなの? 好き? 嫌い?」
嫌いだ。自分勝手で責任感のない石野さんみたいなタイプは大嫌いだ。
「好きではないかな」
だが、面と向かって女子に嫌いとは言えない。
「じゃあ、私なんかと付き合うのはすごく嫌でしょう?」
いやだ。絶対いやだ。こんな女子と付き合ったら、振り回されるだけ振り回されるに決まっている。
そんなのはごめんだ。
「そ、そうかも」
でも、僕は気が弱い。やっぱりそうだとははっきり言えない。
「そう。だったら、私と付き合ってくれたら、図書当番してあげる」
石野さんはとんでもないことを言い出す。
「えー」
僕だけでなく周りで聞いていた生徒からも驚きの声が上がった。
「なんで僕が石野さんと付き合わないといけないんだ。図書当番となんの関係があるかわからない。それに石野さんは僕なんかにまったく興味がないでしょう。それなのになんで付き合わないといけないの?」
顔を背けるぐらい興味がない男と付き合おうという石野さんの気持ちがわからない。
「嫌がらせ」
低い声でボソっと言った。
「嫌がらせ?」
なんで僕が石野さんから嫌がらせをされないといけないんだ。
「澤田君は嫌なことを我慢してやっている人もいるんだから、私も嫌なことを我慢してやるのが公平だと言ったわよね」
そんなようなことを言ったような気がする。
僕は頷いた。
「じゃあ、澤田君の言うとおりに私が図書当番をしたら、嫌なことを我慢して私はすることになるわ。でも、澤田君は図書当番することは嫌じゃないんだよね」
たしかに嫌じゃない。僕はまた頷く。
「それじゃあ澤田君は嫌なことをやってないじゃない。私には嫌なことを我慢してやらせといて自分は嫌なことをしないのは不公平じゃない?」
石野さんの綺麗な顔が必要以上に近づいてくる。
ドギマギしてしまい、冷静に考えられなくなってくる。
「それで嫌がらせで僕と付き合うというの?」
石野さんの言い分には納得ができない。
「そうよ。私が嫌なことを我慢してするんだから、澤田くんにも嫌なことを我慢してやって欲しいわ。そうじゃないと不公平なんでしょう。違う? 澤田君はそう言ったわよね。私の言っていること間違っている? どこか間違っている?」
さらに石野さんが顔を近づけてくる。
上から見下ろされるだけでも威圧感があるのに、さらに美人顔を近づけられるとドキドキしてしまい、頭がうまく働かない。
「僕が石野さんと付き合えば不公平じゃないっていうこと?」
石野さんの理屈は絶対おかしいんだが……。
「そうよ。澤田君は私と付き合うのは嫌なんでしょう? 私に嫌なことをさせる以上澤田君も嫌なことをしてよ。私と付き合う? それとも私にだけ不公平なことを押し付けて知らん顔するわけ? 澤田君はそれで平気なの? 澤田君はそんな人なの?」
石野さんは畳み掛けるように言ってくる。
ダメだ。
いくら考えても石野さんの言い分のどこが間違っているのかわからない。
付き合うことを断ったら、たぶん『当番をしない』と石野さんは言うだろう。
別にそれで司書の先生に駄目でしたと言えば、先生は何も言わないだろう。
だが、ちゃんとしている人がいるのに自分はしたくないからしないという理屈をどうしても許すことができない。
僕が我慢すればいいんだ。
僕は女子に気に入られるような話をすることもできないし、イケメンでもない。
なんの取り柄もない僕に石野さんはすぐ飽きて別れるって言うだろう。
少しの間辛抱すればいいんだ。
それぐらいなら我慢できる。
「わかった。付き合うよ。その代わり当番と委員会には必ず出てよ」
石野さんが不満そうな顔をしている。
石野さんの言う通りにすると言っているのに何が不満なんだろう。
「別に無理して付き合ってもらわなくてもいいわよ。わたしは別に図書当番なんかしたくないんだから。澤田君がわたしと付き合いたいって言うなら別だけど」
僕なんかに自分から付き合ってくれって言うのはプライドが許さないということか。
もうこうなりゃヤケだ。
「石野さん、僕と付き合ってください」
「いいわよ」
石野さんがニコッと笑った。
これで断られたら、殴ってやろうかと思った。
もちろんそんなことは僕には出来ないだろうけど。
「じゃあ、今日は当番だから必ず図書室に行ってよ」
僕がそう言うと、石野さんが突然手を出した。
握手かな?
石野さんの手を握った。
「何してるの?」
不思議そうに僕を見る。
「握手」
「なんで握手をしないといけないの。バカじゃないの? 私と付き合うんでしょ。どうやって連絡し合うのよ!!」
アドレスとか携帯の番号を教えろっていうことね。
だが、スマホも書くものも持っていない。
「ごめん。書くもの持ってないよ」
「ここに書いて」
石野さんは何かのノートの一番後ろを開けると、シャーペンを僕に渡した。
携帯の番号とメールアドレスを書いて渡す。
「私のは後でメールするわ」
石野さんはそう言うと、用事は終わったと言わんばかりに机に突っ伏してしまう。
なぜこうなったんだろう。全く理解できない。
極度の緊張と精神的疲労で、フラフラしながら教室を出た。