思わず飛び出してしまった。
 むち打ちで痛む体にさらにムチを打ち行くあてもなく走った。そして、ふと目にとまった。そして耳に何度か聞いたことがある音が入ってくる。

 ピッピッピッピッ……ピーーーー……

 テレビで何度か聞いた音、終わりの音、途切れず流れる不快音。
「田中……ヒサシ」
 俺の名前が書かれた病室、開かれた扉から中が見える。
「残念ながら、田中ヒサシさんはもう……」
 重苦しい空気、みんな俯いていた。
「クソっバカ息子が……」
「アニキ……なんで、バイクとったら俺と一緒にツーリングするって言ってたじゃんかよぉ……」
 さらに理解できなかった、なんで親父とトシはそこで泣いてるんだよ。俺はここに居るじゃねーかよ。
「親父……トシ……」
「あ、あんたは」
「うぐっ……ぐすっ」
 俺はいつの間にか2人の後ろに立っていた、そしてその間から見えた寝ている奴を目の当たりにして、吐き気を催した。
「なんで……うっ……おえ……」
 なんで俺が目の前で寝てるんだよ。
「なんだよこれ、なんなんだよ! ふざけんじゃねーよ!」
 ベッドの前に立つ二人の間をこじ開け眠っている俺の胸ぐらを掴む。
「ちょっと、中尾さん! 落ち着いてください!」
 俺を止めるな、目の前にいるのは俺なんだ、頼む、夢なら覚めてくれ。
「こんな簡単にくたばってんじゃねーよ!! さっさと起きろよ!!」
「患者が暴れてる! 早く抑えて!」
 数人に抑えられ俺はいつの間にか気を失っていた。