「なんてことなの……こんなことって……」
「姉ちゃん! どうしたんだよ」
 全く理解が追いつかない、この状況はなんなんだ、俺は変な夢を見てるのか。
「恐らく、事故が原因で記憶に支障をきたしているのでしょう、この後もう一度精密検査の後本日はもう一日入院してもらいます」
 こんな状況でも医者は冷静に話す。いや、冷静と言うには表情に戸惑いが見える。医者も今起こっている事態が理解出来ていないようだ。
「俺は……俺だよな? 田中ヒサシだろ?」
 この言葉に医者は目を大きくさせ驚く。
「……っ!? 田中ヒサシさんは今回の事故を起こした相手側ですよ」
「え?」
 今なんて言った、俺が俺を轢いただと?
 訳が分からない、ベッドの横の窓を見る。
 そこには見知らぬ少女が映っていた。可愛いかどうかで言えば超可愛い、俺の学校でもこのレベルの子はいない。モデルでもやってるのかよ。その不安で満ちた大きな瞳が俺を真っ直ぐ見つめてくる。
「だ、誰だよお前……見てんじゃねーよ」
 俺が口を開けばその少女も口を開き、指をさせばさしてきた。
 間違いない、映ってるのは俺だ。
「これが……俺? う、うぅ……うわぁーーー!!」
「日向どこ行くんだ!?」
「中尾さん!?」