頭が酷く痛い、全身がむち打ちのように痛んで動かせない。瞼も重くて開くのに少し力がいる。
布団じゃない、寝てるのはベッドか。じゃあここは病院だな。
ぼんやりだけど声が聞こえる。
泣いてる?
俺にそんな知り合いいたっけな。母さんは親父に呆れて俺を放ってどこかに行ったし、親父は俺なんて構わず毎晩女遊びしてる。弟のトシは、あいつは単車も乗れねーで原付走らせてる、まぁ泣いてるとしたらトシだろうな。
「し、心配いらねーぜ」
重たい瞼を開き頭を抑えながら上半身を起こす。
「男ならいつまでも泣いてんじゃねーよ、ト……シ……」
目の前にいるのは高一の弟トシのはずなのに、いるのは明らかに見た目中坊のガキ。
ナヨナヨしていて覇気なんて感じない。こんなやつ知り合いにいないはずだ。
「誰だお前」
ナヨナヨ小僧は口をぱくぱくさせると、震えながら声を絞り出す。
「ね、姉ちゃんが目覚めたよ! 母さん!」
「ね、姉ちゃん? なに言って――」
小僧が病室から出ると次々と人が入ってくる。
知らないおっさんとおばさんに医者と看護師。
「日向目覚めたの?」
「良かった……お前に何かあったら父さん……もう……」
理解が追いつかない、誰だこの二人は、親感出してるけどしらないし。
「ちょ、ちょっと待てよ! お前達誰だよ、日向って誰だよ」
俺の言葉に周りは驚きの色を示す。
そして二秒程の沈黙が流れたあとおばさんが泣き崩れた。
「日向、お父さんとお母さんだぞ? 覚えてないのか?」