夕日が沈み始め昼と夜の境界線が見える時間、俺はその時間が好きだ。退屈な授業を寝てやりすごした自分へのご褒美に大好きなバイクで街を駆ける。風を感じる、風を突っきる時だけ俺は自由で入れる気がした。
 この不自由な世界でこの瞬間だけ俺は檻から飛び出した鳥のようにただ何も知らずに飛ぶ。
「我ながらシブいぜ」
 それに今日はいつもと違う、先月契約して昨日入庫したばかりの新品だ、音も乗り心地も全てが違う。
「今日の夜は長いぜ!!」
 排気音が鳴り響く、俺とコイツはもう既に一心同体。
 周りなんて関係ない、周りなんて気にするな。でも――

 注意はすべきだった。

「ん? うぉ!? あっぶねぇぇえええ!」
 目の前の十字路で一時停止を無視して突っ切ろうとした時、角から自転車が飛び出してきた。
 クラクションを鳴らしてももう既におそい、スピードも気づけば100近く出している。
「ちっくしょーー!!」
 ブレーキを目いっぱいかけたが止まることは無かった。体に強い衝撃が走り、俺は宙に浮いた。

 そして俺は気を失った。