あの葡萄狩りの日から
三ヶ月経って
秋から冬に変わり
街はクリスマスムードと
なりつつあった。

当然、プレゼントを
買うのだけれど
俺たちはお互いにリクエストする。

そう、誰が何を
渡すかは最初から
わかっているわけだ。

そんなことは
問題ではない……

何が問題かというと、
プレゼントを買いに行った先で
今度は大樹君の元カノと
何故か、葵君の元カノまで
出くわしてしまったわけだ。

俺たちは
今年の下半期の運が
悪かったのだろうか?

場所は、アクセサリー屋で
髪はロングで茶髪、
目鼻立ちは整っている。

「あれ? 大樹?」

呼ばれた大樹君は
ゲッとあからさまに
嫌な顔をした。

「ちょっと、
あからさまに
嫌そうな顔しないでよね」

口ではそんなことを
言っているが、女の子は
ケラケラと笑っていた。

「こんにちは、
大樹の元カノの
秋草燕っていうの
よろしくね」

サバサバした性格らしい。

何処か紗葵君に
似ているかもしれない。

成る程、大樹君は
こういう感じの子が
タイプなんだなぁ。

しかし、なんて
自己紹介すればいいのだろうか?
三ヶ月前を思い出すと
迂闊に“ふうふ”とは
言えないよな。

さて、どうしたものかと
考えていると、秋草さんは
何でもないことのように
俺たちの関係を言い当てた。

「大樹、
可愛い嫁さん
貰ったんだね。
そっちのお二人さんも
“ふうふ”でしょう?」

紗葵君の元カノと違って
偏見はないらしい。


『よくわかりましたね』

答えたのは葵君だった。

「雰囲気で何となく
わかるものよ」

当たり前のように
言ってるけど、普通は
俺たちを見ただけじゃ
ただの友人か兄弟にしか
見えないはずだ……

「相変わらず、
変な特技もってるよな。
こいつは、大体のことは
当てるから隠し事が
できないんだぜ」

感がいいんだな。

『凄いです。
ところで、自分の
元彼が男と
結婚したことは
気色悪いとか
思わないんですか?』

「あら、どうして?
恋愛は個人の自由。
大樹が選んだ相手なら
性別は関係ないんじゃ
ないかしら」

やっぱり、秋草さんは
凄い人かも……

「サンキューな」

照れ臭そうに
大樹君がお礼を言った。

「あら、いいのよ。じゃあね」

他に用事があるからと
秋草さんとはアクセサリー屋の
入口で別れた。

「葵、お久しぶりね」

次に行った本屋の
ミステリーコーナーで
声をかけて来た女性は
黒髪の知的系美人って感じだ。

『美月か、久しぶりだな』

親しそうに話す二人。

「兄貴の元カノ」

紗葵君がボソッと呟いた。

マジかぁ〜

何だか凹むなぁ……

俺とは丸っきり
正反対って感じなのに
何で葵君は俺と
結婚したんだろうか?

ちょっと不安に
なってしまった。

『大海、何処行くんだ?』

こっそり、その場から
逃げようとしたのに
目敏く、葵君に見つかった。

『あ、葵君……』

咄嗟の時は、
上手い言い訳が出てこない……

「紗葵君は久しぶりね。

そっちの二人はお友達?」

これが普通の反応だよな。

「お久しぶりです。
いえ、右隣りに居るのが
“旦那”の中里大樹で
左隣りに居るのが
兄貴の“嫁さん“で
旧姓藤並大海ですよ」

ちょっ、紗葵君!?

そんなあっさりと……

ほら、葵君の元カノさんが
黙り込んじゃったじゃん。

五人の間に変な
空気が流れてる気がする……

『自己紹介の
手間が省けたな、
助かったぜ紗葵』

「どういたしまして」

やっぱり、
感覚がズレてるよな。

大樹君も呆れて
ため息をついた。

『え~と、初めまして
葵君の“嫁”で
藤並は旧姓で
今は高沢大海です。』

怖ず怖ずと自己紹介してみた。

あえて、“よろしく”
とは言わなかった。

「葵の元カノで相川美月です。
大海君、それから、
紗葵君の旦那さんの
大樹君もよろしくね」

握手を求められたから
右手を差し出すと
ギュッと握られた。

『よろしくお願いします……』

気圧されながらも
とりあえず、挨拶は終わった。

「相川さんは
俺たちみたいなのを
軽蔑しないんですか?」

さっき、俺が秋草さんに
した質問を今度は大樹君が
相川さんにしている。

「しないよ?
確かに、別れたのは
寂しいけど、葵が
この人ならいいと
思ったんなら
性別なんて
関係ないじゃない。
恋愛は理屈で
するんじゃなくて
心でするものだもの」

秋草さんや相川さんは
いい人たちなんだな。

『ありがとうございます』

俺は相川さんにお辞儀した。

「お礼
言われることじゃないわよ」

クスクスと上品に笑った。

『美月、ありがとう』

いつの間にか、
俺の隣に移動していた
葵君もお礼を言った。

「やぁねぇ、ふうふ揃って」

相川さんはまた笑った。

「此処で会ったついでに
葵にお願いが
あるんだけれどいいかしら?」

何だろ?

『どうした?』

「あの本、取ってほしいのよ」

ああ、何だ、そんなことか。

内心ホッとした。

『そういうことなら、
ほら、これか?』

葵君の手の中にある
本のタイトルは英語で
俺には読めなかった。

「そう、これこれ
ありがとう、届かなくて
どうしようかと思ってたのよ」

周りには台らしき物はなく、
店員は女性ばかりだった。

『どういたしまして』

やっぱり、
背が高いっていいよな。

男としては
羨ましかったりする。

「ねぇ、四人共
この後何か予定あるかしら?」

会計を済ませた相川さんが
俺たちに訊いてきた。

『別にないが』

葵君が答えると
嬉しそうな顔になった。

「じゃぁ、
皆でご飯食べに行きましょう」

弾んだ声で言われた
言葉に俺たちは
一瞬、ほうけてしまった。

『本気で言ってるのか?』

「当たり前じゃない」

普通、元彼の家族と
飯食いに行けるか?

相川さんがいいなら
気にすることないか……

『俺はいいですよ
何処に行きますか?』

相川さんに笑って答えた。

『おい大海』

慌てたのは葵君。

「まぁいいんじゃねぇ?」

紗葵君も
嫌じゃないみたいだ。

「諦めろ、
俺たちが嫁たちに
敵うわけないだろ」

葵君の肩に手を置いて
大樹君が言った。

『そうだな、
美月、何処に食いに行く?』

「皆の行きたい所でいいわよ」

紅一点の相川さんは
何処でもいいらしい。

『じゃぁ、久しぶりに
定食屋にでも行くか』

駅ビルのレストラン街にある
定食屋さんに
行くことになった。

「そうと決まれば
早く行こうぜ」

年上なのに可愛いと思った。