俺たち二人は
まだ学生だが
紗葵君は
大学でよくモテるらしい。
逆ストーカーみたいに
なる子が稀に居ると
前に紗葵君が
言っていたのを
思い出していた。
大樹君という旦那様が
居るんだから当然断る。
そうすると、
中には家まで
着いて来ようとするらしく
紗葵君は燕さんと
美月さん、それから、
三家の母親以外の
女性に対して
恐怖症気味だ……
本当は大学さえ
行きたくないと
休み明けに
言ってたけど
出席日数が
足りないらしく
渋々、大学へ。
そして、案の定、
事件は起きた……
それは、
偶然が重なった
ある平日の夕方。
「大海!!」
呼ばれて振り向くと
必死に走ってる紗葵君。
『どうしたの?』
視線を斜め後ろに
反らすと女の子が一人
一定の間隔を開けて
俺たちの後ろを歩いている。
『もしかして、
例の逆ストーカー?』
一つの可能性は
紗葵君が頷いた
ことで確信に変わった。
「まさか、
此処まで
着いて来るとは予想
してなかったんだけどよ……」
走ると余計に
追いかけて
来そうだから
あえて、歩いた。
問題は何処で撒くかだ。
『大胆な子なんだな』
他に言葉が出てこなかった。
「同じ学部で同い年。
一回告白されて、
断ったのに
しつこいんだよ……」
う〜ん……
『いっそうのこと、
家まで連れていって
恋人と一緒に
暮らしてるのを
解らせたらどう?』
下手すれば、大学中に
知れ渡ることになるだろうが
何回も付き纏われるより
マシだと思って、提案してみた。
「でもよ、
相手が男って知って
別れたらとか
思われても
ムカつくんだよな」
それは言えてる。
『確かに、
それはムカつくかも』
俺たちは学校では
指輪を外してるから
フリーだと思われがちだ。
社会人の大樹君と葵君だけ
毎日、指輪を嵌めている。
「だろう?」
面白い事を思いついた。
『紗葵君、
やっぱり、あの子を
家に連れていこう』
今日、何故か
燕さんも来ているから
ひと芝居うってもらおと思う。
「お前、何企んでる?」
『ちょっと、皆に
協力してもらうだけ』
買物袋の一つを
紗葵君に渡し、
バッグから携帯を出して
葵君にメールした。
そして、家に着いた!!
「お帰り、紗葵・大海
ところで、後ろの
お嬢さんは誰かしら?」
燕さんナイス演技。
「同じ学校の奴で
恋人がいるから
付き合えないって言ったら
会わせろって
言うから連れて来た」
めんどくさそうに
言う紗葵君に俺は
噴き出しそうになった。
「そうだったの。
初めまして、
紗葵の恋人の
秋草燕です」
横で見ている
“本当”の恋人の
大樹君や葵君までも
笑うのを耐えている。
「初めまして……」
声が上擦ってるよ。
「会わせたんだからもう帰れよ」
心底、ウザいと
全身で訴える紗葵君に
ストーカー女は来た道を
走って行った。
「皆、サンキナュー」
家の中に入り、
ホッと一息ついたところで
紗葵君が俺たちに言った。
『家族なんだから
困ってる時に
助け合うのは
当然のことだろう』
そう、前にも言ったけど
俺たちは家族なんだ。
「サキ」
大樹君は紗葵君を
目一杯抱きしめた。
「ごちそうさまって感じよね」
テーブルに肘を付きながら
二人を眺めていた
燕さんが呟いた。
「うるせー」
本当に照れ屋だよな。
これからも、
きっと沢山嫌なことも
不愉快になることも
あるかもしれないけど、
こんな日常が
いつまでも
続けばいいと思った。
(完)
まだ学生だが
紗葵君は
大学でよくモテるらしい。
逆ストーカーみたいに
なる子が稀に居ると
前に紗葵君が
言っていたのを
思い出していた。
大樹君という旦那様が
居るんだから当然断る。
そうすると、
中には家まで
着いて来ようとするらしく
紗葵君は燕さんと
美月さん、それから、
三家の母親以外の
女性に対して
恐怖症気味だ……
本当は大学さえ
行きたくないと
休み明けに
言ってたけど
出席日数が
足りないらしく
渋々、大学へ。
そして、案の定、
事件は起きた……
それは、
偶然が重なった
ある平日の夕方。
「大海!!」
呼ばれて振り向くと
必死に走ってる紗葵君。
『どうしたの?』
視線を斜め後ろに
反らすと女の子が一人
一定の間隔を開けて
俺たちの後ろを歩いている。
『もしかして、
例の逆ストーカー?』
一つの可能性は
紗葵君が頷いた
ことで確信に変わった。
「まさか、
此処まで
着いて来るとは予想
してなかったんだけどよ……」
走ると余計に
追いかけて
来そうだから
あえて、歩いた。
問題は何処で撒くかだ。
『大胆な子なんだな』
他に言葉が出てこなかった。
「同じ学部で同い年。
一回告白されて、
断ったのに
しつこいんだよ……」
う〜ん……
『いっそうのこと、
家まで連れていって
恋人と一緒に
暮らしてるのを
解らせたらどう?』
下手すれば、大学中に
知れ渡ることになるだろうが
何回も付き纏われるより
マシだと思って、提案してみた。
「でもよ、
相手が男って知って
別れたらとか
思われても
ムカつくんだよな」
それは言えてる。
『確かに、
それはムカつくかも』
俺たちは学校では
指輪を外してるから
フリーだと思われがちだ。
社会人の大樹君と葵君だけ
毎日、指輪を嵌めている。
「だろう?」
面白い事を思いついた。
『紗葵君、
やっぱり、あの子を
家に連れていこう』
今日、何故か
燕さんも来ているから
ひと芝居うってもらおと思う。
「お前、何企んでる?」
『ちょっと、皆に
協力してもらうだけ』
買物袋の一つを
紗葵君に渡し、
バッグから携帯を出して
葵君にメールした。
そして、家に着いた!!
「お帰り、紗葵・大海
ところで、後ろの
お嬢さんは誰かしら?」
燕さんナイス演技。
「同じ学校の奴で
恋人がいるから
付き合えないって言ったら
会わせろって
言うから連れて来た」
めんどくさそうに
言う紗葵君に俺は
噴き出しそうになった。
「そうだったの。
初めまして、
紗葵の恋人の
秋草燕です」
横で見ている
“本当”の恋人の
大樹君や葵君までも
笑うのを耐えている。
「初めまして……」
声が上擦ってるよ。
「会わせたんだからもう帰れよ」
心底、ウザいと
全身で訴える紗葵君に
ストーカー女は来た道を
走って行った。
「皆、サンキナュー」
家の中に入り、
ホッと一息ついたところで
紗葵君が俺たちに言った。
『家族なんだから
困ってる時に
助け合うのは
当然のことだろう』
そう、前にも言ったけど
俺たちは家族なんだ。
「サキ」
大樹君は紗葵君を
目一杯抱きしめた。
「ごちそうさまって感じよね」
テーブルに肘を付きながら
二人を眺めていた
燕さんが呟いた。
「うるせー」
本当に照れ屋だよな。
これからも、
きっと沢山嫌なことも
不愉快になることも
あるかもしれないけど、
こんな日常が
いつまでも
続けばいいと思った。
(完)