「大変。翠が居なくなった」
 三笠君に助けを求める。
「翠ちゃんが、居なくなったって」
 近くの白い岩石を観察していた三笠君が、慌ててやってきた。
「そうなの。一緒に探して…」
「さっきまで、あそこに居たようだったけど」三笠君が、数メートル先の水の流れを
指さす。

 その場に走っていく。
「翠。翠。何処に居るの」
 呼べど叫べど、返事がない。
 あたりの草をかき分けても、影も形も見当たらない。

「濱野さん。来て!」
 三笠君が何かを見つけたようだ。
 急いで三笠君の側に行く。
「水の流れの中を見て…」
 言われるままに、足元の小川の中を覗いてみる。
 水の流れの中には、どこかの公園の様子が映っていた。
 見覚えのある場所…。
 そうだ、今朝、三笠君の自転車と衝突したあと、手当てをして貰った公園だ。
 私が座っていたベンチもある。
「アッ。翠が居る!」
 ベンチの下から翠が現れ、不安そうな面持ちで、辺りの様子を伺っている。
「な…なんで、翠がこの中に!?」