「なになに? イヤだよ、いくら二人きりになったからって、人の家でキスするのは
無しだよ」と素子さんが揶揄うように笑う。
「いや、そんなことしてませんから」と大慌てて否定する三笠くん。
「本当?」
「ほ、本当です…」と照れながら否定する三笠くん。
「ならいいけど。私、店番があるから居なくなるけど、キスとかするなら表に聞こえ
ないようにお願いしますね」と可笑しなことを言いながら部屋を出て行った。

 私と三笠くんが座敷の部屋に取り残される。
「あのぉ。さっきのは事故だから…、その…。気にしないで…」
 三笠くんがあらぬ方向を見やりながら弁明する。
 事故? やっぱり私、三笠くんとキスしちゃったの? 気が付かないうちに。
 猛烈に顔が熱い。頭から湯気が立ちそうだ。

 私と三笠くんが、お互いに背を向けたままで座っている。
 言葉を発する雰囲気では無い…。困ったな、何を話せばいいだろう。
 テコテコテコ、と、翠が小走りでやってきて、私の膝の上に乗っかった。
 そうだ。悠長にしては居られない。
「あの、三笠くん。私、気絶してる間に、ネコモリサマに会ったの。それで…」
 私は、超次元でのネコモリサマとの会話の内容を三笠くんに語って聞かせた。
 翠を元に戻すために、24時間以内にネコモリサマの隠れ家を探し出さねばならぬ
事も伝えた。

「ネコモリサマの隠れ家…かぁ…。それだけじゃ、全くわからないな」
 三笠君が腕組みして考える。
「そうだ…。ネコモリサマが以前に住んでた場所に入り口があるって言ってた」
「ネコモリサマが以前に住んで場所…ねぇ。結局、その場所も分からないからなぁ」
「でも、ネコモリサマは、それがちゃんとしたヒントなんだって…」