恩返しの三つの願い。

 そうだ、大事な事を忘れていた。
 翠を人間に戻して貰うために、ネコモリサマを探してたんだっけ。

 私はネコモリサマの方を向いて、正座のまま姿勢を正す。
「ネコモリサマ。ネコモリサマ。私の願いは、たった一つです。猫になった妹の翠を
人間に戻してやって下さい」

 へっ。
 ネコモリサマが、間の抜けた返事をする。
「すまんのう。願いの意味が、わからんかった。もう、一度言ってくれるか」
「何度だって言います。翠を元に戻して下さい。翠を人間に戻して下さい」
「えー!!! …と、それは…。最初の願いを無しにするって意味かの?」
「そうです。最初の願いを無しにして欲しいってことです!!」
「あらまあ、それは…」
「あらまあ、それは?」
「それは、ちと…」
「それは、ちと? まさか、出来ないんですか? ネコモリサマなのに?」
「いや、そんな事はないんじゃが…。なんか、他のお願いにならんかの?」
「他のお願いなんてありません。翠を戻してください。出来ないんですか?」

 私をはぐらかそうとしてるのか、ネコモリサマの答弁が段々と怪しくなる。
「ひょっとして、本当に翠を人間に戻せないですか」
「いや…、そんな事は…ない。…ぞよ」
 断言の言葉を吐きながら、視線はあらぬ方向を向いている。
「それなら、今すぐ…」
「それがの、それは…、ちと条件が要るんじゃ」