私の目の前に広がっていたのは、白一色の風景だった。
 どこまでの続く白い空。その空に白い雲が浮かんでいる。
 白い空に白い雲。良く考えれば、区別出来そうにないけれど、そこに雲がある事が
私には分る。
 下に目を移すと、一面の白い草原。
 踝より少し高いくらいの白い草が、見渡す限り続いている。
 白い草原と白い空が、遥か彼方で白い地平線をかたちづくる。
 風が吹き抜け、白いさざ波が草原の中を駆け抜けていく。

 四方を見回してみると、ところどころに木が生えている。これも白い。
 まばらに岩が見えるのだが、白い草原に白い岩なので距離感がわからず、大きさの
見当がつかない。

 知らない場所に、私ただ一人。
 すごい心細い。
「だれか居ないのー」
 返事はない。
 近くの見える木に向かって歩き出す。
 そこに人気があるわけではないが、とにかく何かの傍にいたい。
 数歩進んだところで、草の中に小川が見えてきた。
 小川といっても、幅が10センチほど。単なる水の流れと言ってもいいくらい。

 私は、その水の流れに色が付いていることに気が付いた。
 その色に引き寄せらせ、跪いて水の流れを覗き込む。
 あっ!
 思わず驚きの声がでる。
 水の流れの中には、猫守神社の様子が映っていた。
 そこには、正気を失ったように横たわった私が見える。
 三笠くんが駆け寄り、懸命に私に呼びかけている。

 何? これって、どういうこと? 私、ここにいるのに。
 まさか…。まさか…。
「もしかして、ここは天国なの?」