店員さんが私の存在に気がついたようだ。
 私は小さく頭を下げて、こんにちは、と口を動かす。
「あれあれあれ」
 店員さんは素っ頓狂な声を上げ、ショーケースの間を抜けて、私の目の前にやって
来る。
「だれだれだれ!? こちらの彼女? 紹介してよ、聖真くん」
 と言いながら、私の様子を頭の天辺から爪先まで、舐めるように観察する。
―近い。顔が近い―
 と、引き気味になる。

 三笠君はすかさず
「こちら、同級生の濱野美寿穂さん。で、こちらが仁連屋の若女将の仁連素子さん」
 と私を紹介してくれた。
「若女将じゃなくて、マスコット・ガールとか言ってよ、せめて看板娘とか」
「じゃぁ、それで…」
「じゃぁって何よ? まぁ、いいや。ところで、濱野さんって三笠君の彼女さん?」

 えー。なんでそうなるの? 私は、素子さんの方が彼女さんなのかと思った。
 でも、さっき「久しぶり」とか言ってたから違うのかな?
 あーちゃんは、おととい、三笠君と彼女さんが一緒のとこを見たって言ってたし。

「い…、いやぁ」
 三笠君が曖昧な返事をする。
「あぁー、怪しい。濱野さん、可愛いもんね。すごく」
 素子さんは、またまた私を嘗め回すように観察する。
 私は、手を左右に振って懸命に否定する。

 でも、それは可愛いを否定してるのであって、私が三笠くんの彼女である事を否定
してるわけではないんだけど……。そのこと、分かってくれてるかな。