「うーむ」
 私が全てを話し終わったあと、三笠くんが発した第一声はそれだった。
 ひょっとすると溜息だったかもしれない。
 三笠くんは、困ったような顔つきで腕組みしている。
 この様子では、やはり信じて貰えなかったようだ。
 話すべきではなかった、体の中で後悔の念が重苦しく固まる。

「濱野さんは、カモノハシって知ってる?」
 いきなり三笠くんが、全く関係ない話を始めた
「カモノハシ? えーと……。鳥の様な嘴のある動物で、卵から生まれる哺乳類……
だったかな」
「そう、そのカモノハシなんだけどさ、オーストラリアで発見された後、イギリスに
剥製が送られたんだ。でも、多くの科学者は作り物だといって信じてくれなかった。
鴨の嘴とビーバーの身体を合わせた偽物だって言ってね」

 私は、三笠くんの顔を見つめる。
 その顔は、困惑の顔からいつの間にか普段の明るい三笠くんの顔に変わっている。
「だけど、カモノハシは本当に居る。濱野さんの話も、俄かには信じられないけど、
濱野さんが言うんだから、本当なんだと思う」

 信じてもらえた。
 それも、三笠くんに信じてもらえた。
 その事が嬉しくて、また泣きそうになる。