「えっ!? 猫」
 三笠くんが、驚きの声を上げる。
 それと同時に、さっきまで私を見つめていた三笠くんが、視線を外してあらぬ方を
見た。

 引いてる。どうみても、三笠くん引いてる。
 で、ですよねー。
 涙まで流して、取り乱しておいて、探してるのが猫。
 事情を知らない三笠くんが、引いてしまうのも無理はない。

「あの……やっぱり……私一人で……」と言いかけたら
「その猫、どんな猫」
 三笠君が視線を外したまま尋ねてくる。
―ああ、一応、形だけは、聞いてきてくれるのね。ほんと御免なさい―

「えーと、全身が混じり気の無い雪のような白。細身で、毛足は短く、尻尾は長め。
まるでお姫様みたいな感じ。目の色は金色で、瞳のまわりだけグリーンぽくて…」
 と説明してみる。
 見たことが無い筈なのに、鮮やかな印象が残っていることが自分でも不思議だ。
 三笠くんは、私が説明するあいだ一度も目を合わせてくれない。
 ずっと、違う方向を注視している。
 もう、私のことなんか関心がなくなったんだ。
 なんか、居たたまれない。やっぱり、自分独りで探すって言おう。


「ひょっとして、あの猫がそうじゃない」
 三笠くんが、自分の視線の先を指さす。
 えっ!?
 私がその方向を振り返る。
 二~三メートル先の茂みの陰から、私たちの様子を伺っている白猫と目があった。

「ミドリ!?」