「それじゃ、これから遺跡めぐりですか?」
 と尋ねると
「ん…んーん。今日はちょっと、家に居づらい事ができたんで…」
 と謎の答えを返された。

「ところで、濱野さんは? さっき探し物してるようなこと言ってたけど…」
 そ、そうだった。三笠くんに会って舞い上がり、すっかり翠のことを忘れていた。
 先ほどまの不安と心細さが、再び首をもたげる。
 胸の辺りが苦しくなる。
 こうしている間、ミドリが私から離れていくのかもしれない。

「ごめんなさい。忘れてました。あの。私の不注意で転んだだけなのに、親切にして
くれて、ありがとうございました。それじゃ、急いでますんで…」
 私は、早口でまくし立てて、ベンチから立ち上がる。
 ペコリと頭を下げて、その場を立ち去ろうとする。

「待って。濱野さん」
 また、手を掴まれた。
 三笠くんの手が熱い。
「その探し物。僕も一緒に探すよ」
「えっ!?」
「一人より二人の方がいいでしょ。それに自転車があれば…、えっ、えっ、えっ?」
 
 不安と心細さのなか、優しい言葉をかけられたので、急に目頭が熱くなってきた。
 と、思う間もなく涙が流れた。
 私が急に泣き出したので、三笠くんが絶句している。
 事情を説明しようと思うけど、言葉が出てこない。