公園のつくと、三笠くんから傷を水洗いするように促された。
 言われた通り、水道水で擦り傷の周りの汚れを落とす。

 ベンチに座るように言われたので腰を下ろすと、三笠くんが自転車の前籠にいれた
リュクから絆創膏を取り出す。最近流行りの、湿潤療法の絆創膏だ。

「これだと、傷のあとが残りにくいんだって。けど、女の子の足には触れないので、
自分で張って貰えるかな」
 と恥ずかしそうな顔で、その絆創膏を手渡された。
 どうやら、三笠くんの中では、私は女の子の部類になっているらしい。
 ちょっと安心。

 絆創膏を貼ると、ヒヤッとして何だか痛みが薄らいだ感じだ。
「ありがとうございます」
 三笠くんの目を見ながら、素直にお礼が言えた。
「よかったよ。リュック持ってきて。役にたった」と三笠くんが笑う。
 私もつられて笑顔になる。

「三笠くんて、いっつもリュックに傷絆入れてるんですか?」
 と、ここで私は素朴な疑問を口にだす。
「僕、歴史が好きなんで…」
 と、答えになってない答えを返された。
 私が、首を傾げると。
「それじゃ分かんないよね。僕が好きなのは、地方の民間伝承とか、そんなの」
 まだ、言っている意味が分からない。
 なんだか、三笠くんもアセアセしてるように見える。

「それで、人が寄り付かない古い神社や遺跡とかを訪ねることがあるんだけど、藪の
中や雑木林に入り込む事があるんで、よく引っ掻き傷をこさえるんだ」
 なるほど、ようやく納得。