念を押されて、ちょっと後ろめたい気持ちが湧いてきた。
 だけど、どうせ夢なんだからと思い直し。
「それで、お願いします」
 と元気よく答えた。
「それなら…」
 その言葉を残して、髭猫は目の前から消え去った。
 まるで黒板消しで、黒板に書かれた文字が消えるように。

「あれ? 願い事は…」
 猫の居なくなった部屋はいつもの私の部屋。
 電灯の豆球の明かりだけの薄暗い部屋。
 あれ、もう夢から覚めた?
 なんだ、つまんないの。

 と思っていたら、私の部屋が白っちゃけてきた。
 暗い部屋がすべて灰色に変わる。
 ベッド、壁、勉強机、カワセミのポスターやぬいぐるみ。
 すべての物の色が灰色。そして白へと変わっていく。
 そして、私の意識さえも…。

 なに。なにが起こってるの…。
 その疑問も…
    やがて…
       白い闇の中に…
          掻き消え…