「思い出した? じゃぁ、本題」
 そういって髭の猫がいずまいを正す。
「儂って、義理堅いのよ、こう見えて。じゃからの、儂を助けたお礼に、ミズホの願いを
叶えてやろうと思っての」

 私の願いを叶える? 猫が?
 あぁ。いよいよ、これは夢だ。
 鶴の恩返しとか、亀の恩返しとかの類なのね、これ。
 きっと、私がそんな夢物語に救いを求めてるんだ。
 夢なら夢で、醒めてしまう前にせいぜい夢を楽しもう。

 あっ、でも。猫が叶える願いでしょ?
「あのぉ。その願いって、鼠やマタタビを持ってきてくれるとか…ですか?」
 何故か、下手に出て御伺いをたてる私。

 それに対して、髭猫は片足で首筋の辺りを掻きながら、
「いや、人間が望むことなら、大概はできるよ」
 と大儀そうに答える。
 本とにできんの?
 てか、毛が落ちるからベッドの上で、体を掻くのは止めてほしいんですけど。