ガラガラッ。
 玄関のドアが開く音が聞こえた。
「ただいまー」
 元気な声が家じゅうに響く。翠が帰ってきたんだ。

 ダダダダダッ。
 階段を駆け上がる音がする。
 もう直ぐ、翠が私の部屋に駆け込んでくる。

 翠は、お姉ちゃんっ子だ。
 小さい頃は、いつも私にひっついていた。
 私も慕われれば、可愛いいと思うので、翠には甘くなった。
 幼いころの翠は痩せていて、体も丈夫じゃなかった。
 よく風邪をひいては、私が食事の世話を焼いたりした。
 それなので、翠はよく私に甘える。
 流石に、翠も中学二年生になったので、私にピッタリという事は無いのだが、家に
帰ると自分の部屋に入るより前に、私の部屋に顔をだす。

「お姉ちゃん! ただいま」
 ビックリするような勢いで、ドアが開く。
 翠を心配させてはいけない。
 私は渾身の造り笑顔で
「おかえり。翠」
 と返す。

 それに安心したのか、翠は輝くように「ニッ」と笑って、私の部屋を出て行った。