ドスン。
 誰かとぶつかった。
「ご、ごめんなさい」
 慌てて頭を下げる。
 考え事をしていて、前を見ていなかった。
 ? いや、意識が一瞬跳んだような気がした。…これは、気のせいかな?

 気を取り直して、再び歩き出す。
 そりゃ、私だって。三笠くんと親しくなった未来を夢見ることだってあるよ。
 楽しくおしゃべりしたり、映画みたり、遊園地いったり。
 プレゼントを贈ったり、貰ったり。
 浜辺で追いかけっこしたり、夕日の中でキスしたり。

 想像のなかではね。
 でも、ほんとの私は男子とおしゃべりする事からして、無理の無理。
 私の家系は女系の家系らしく、きょうだい・いとこは、女ばっかり。
 男の子と何の話をすれば良いのか、見当がつかない。

 はぁ…。溜息がでる。まるで、溜息で呼吸してるみたいに、一杯でる。
 告白すべきか、黙っているべきか。
 何度目かの堂々巡りを繰り返す。

 ふと気が付くと、私は横断歩道の前に立っていた。
 あっ。また考え事してて前後不覚になっていた。

 私の斜め前にいた猫が歩き始めた。
 私も、その猫につられて、足を踏み出す。