また、人懐こい笑顔の翠が、頭に浮かぶ。
 今度は、思い切り目をつぶって、その映像を押しつぶそうと試みる。
 けれど、また無邪気な顔の翠が現れる。

―ばかバカ馬鹿。翠のバカ。馬鹿イモウト!
 ほんとにもう。こんなに、お姉ちゃんを心配させて…。
 翠のせいで眠れなかったじゃない。
 おまけに変な夢までみるし…―

 翠のイメージが泣き顔に変わる。

―泣き虫だな。
 子供じゃあるまいし。
 中学二年にもなって、あんなに大泣きすることないでしょ。
 あんたの方が悪いのに、私の方が、心が痛むじゃない…。
 …そりゃあ、私も、つい言い過ぎたかもだけど…―

 瞼の裏の翠はまだ、泣き止まない。

―ほんとに、泣き虫な翠……
 私が…、先に…、謝ってあげるから。
 だから…。
 だから、家を出てくなんて、言わないで…―