おかしい。変だ。自分でも理解できない。
 こんなこと、普通はありえない。

 私は、ミドリの姿を思い出せないのだ。
 どんな種類の猫なのか。
 白猫なのか黒猫なのか、あるいはトラ、三毛。どんな毛色なのか思い出せない。
 全くイメージが湧かない。
 子猫なのか、成獣なのか。
 そもそも、いつから一緒に暮らし始めたのか。

 全く思い出すことができない。
 猫にミドリという名前をつけた、その事だけはハッキリと覚えているのに。
 また夢の続きなのだろうか、それとも私の頭が変になったのだろうか?
 自分が自分でないようで、体中の血液が冷えていく気がする。

 そうだ、写真。
 私はベッドを起きだして、充電中のスマホを手に取る。
 私はスマホで撮った写真を、フォルダ分けして分類している。
 その中に「翠と一緒」というフォルダーがあった。

 開いてみる。
 けれど、そこには猫の写真は一つもなく、代わりに変な絵面の写真ばかりがある。
 私だけが写った自撮り写真。でも、奇妙に私の左隣りが空いている。
 小学校の校門の前に二人並んだ正装の両親の写真。卒業式らしいけど、誰のなの?
 中学校の運動会らしき場所で、また二人並んだ両親の写真。二人の間には、なぜか
一人分スペースが空いている。これも意味が分からない。

 でも、私にはそこに何がしかの重大な意味があるように思えて仕方がない。