「濱野さん。まずは、傷の手当てをしよう」
 暫く経って、三笠君に声をかけられた。
 そのまま三笠君に促されて、ベンチに腰を下ろす。
「丁度、傷バンソウコウを持ってるんだ」
 そう言いながら、三笠君がテキパキと傷の手当てを進める。

「あの…」
 私の脳裏には数々の疑問が沸き起こっている。
「あの、どうして翠と一緒に居たんですか?」
「うちのアカネが居なくなったんで、捜していたんだよ」
 三笠君がベンチの脇にある自転車を顎で指し示す。
 その自転車の前籠には綺麗な赤毛のネコがうずくまっていた。
 アカネって、あの猫のこと?

「そしたら、途中で翠ちゃんとすれ違ってさ。翠ちゃんとは初対面だけど、濱野さん
そっくりだから、直ぐに翠ちゃんだって分かったよ」
 え?、え? どういうこと? 私、自分に妹がいる事を三笠君に話した覚えがない
のだけれど。それに、なんで翠の名前を知ってるの?

「それで、ピーンときたんだ。だから『翠ちゃんが家出して、お姉さんが心配してる
から、早くお家に帰ろう』って、翠ちゃんと此処まで来たんだ」
 また、三笠君が謎なことを言う。
 顔が似てるから、翠が私の妹と推理するまでは良いとして、何故それだけで、翠が
家出したって分かるんだろう。