ハッ。
 窓から差し込む朝の光とともに、私はベッドの上で目を覚ました。
 何だろう。凄く、胸がドキドキしている。顔も火照っている。
 恐い夢でも見たのだっけ?
 それにしては恐怖感や切迫感はなく、不思議な高揚感を感じている。
 寝不足から来ているのだろうか、その高揚感と倦怠感が混ざり合った妙な感覚が、
私の体を満たしている。

 朝日が眩しい。首を捩じり、時計を見る。
―まだ、六時半。三時間しか寝てない…―
 これでは寝不足にも、なるわけだ。

―それもこれも、みんな、翠のせいだ―
 瞼の裏に、翠の顔が浮かぶ。暢気な笑顔が憎たらしい。
 ほんとにもう。こんなに、私を心配させて…。
 翠のせいで眠れなかったよ。

 翠の顔が泣き顔に変わる。
―泣き虫だな。そんなに大泣きすることないでしょ。
 翠の方が悪いのに……、私の心が痛むじゃない……。
 ……そりゃ、私も、たしかに言い過ぎたけど
 私が……、先に……、謝ってあげるから。
 だから……。だから、家を出るなんて、言わないで……―