驚きと緊張で息苦しくなってきた。
 え、えーと。
 どうやって呼吸をしたら良いんだろう。妙に冷静にそんな事を考える。
 三笠君の熱い鼻息が私の頬にかかる。
 そうか、鼻で息をすれば良いんだ。
 詰まっていた呼吸を鼻から吐き出す。

 思いの外、強い鼻息になった。ウワー、三笠君に嫌われたりしないかな。
 三笠君の表情を確かめようと、視線を動かすと、三笠君は目を閉じていた。
 そうか、キスの最中は目を閉じてるもんなんだ。
 慌てて目を閉じる。

 視界が塞がれた事で、唇の感触がより鮮明なものになる。
 自分の唇なのか三笠君の唇なのか、区別がつかない。
 頭がぼーっとなり、足の力が抜ける。
 縋り付くように、三笠君の背中に腕を回す。
 三笠君も私の背中に腕を回す。
 互いの体が密着する。
 体温が通い合う。呼吸が同期する。心臓の鼓動を感じ合う。
 私と三笠君は、いま一つなんだ。
 二人で、一つの体を共有しているように感じる。

 二人を取り巻く世界が、私達の中の一点に溶け込んで行くように感じる。
 時間さえもが、私達二人と一体の物になろうとしている。
 私の感覚も心も、全てが時空の中に溶け込んで、私は光り輝く点になっていく。