「濱野さん。落ち着いて。以前に、翠ちゃんが猫になった時の話を聞かせてもらった
けれど、一旦は翠ちゃんの事を忘れて、結局は思い出したんだよね。それは何故?」
「……それは。多分、翡翠のせい」
「カワセミ?」
「そう。私、子供の頃に見た翡翠の羽の色に強く魅せられていて、その羽の翠色から
翠の事を連想して、思い出したの」
「なるほど、強く心に残っている記憶から、連想できれば良いんだね」
「多分……。でも、三笠君との事を連想できるようなものは、まだ無い」

「無いなら、作ればいい」
 三笠君が、何かを決心したように力強い言葉を発する。
 同時に三笠君の両腕が私の肩に伸びる。
 エッ、エッ、エッ。
 三笠君の顔が近づいて来て、唇を何かで塞がれた。

 息を飲み込む。
 突然の事に驚いて、声が出ない。

 私、いまキスしてるんだ。三笠君と。
 心臓が喉から飛び出るほどの高速回転になる。
 顔がヤケドしそうなほどに暑くなる。
 その熱が、首筋から肩、胸へと広がっていく。