でも、夢じゃないんだ。私と三笠君はお互いに同じ思いを持っているんだ。
 明日から私達は友達以上の関係で居られるんだ。明日も、あさっても、その後も。
 
 そのとき私は、大変な事実に気がついた。
 私はあることに気がついて愕然とした。
「大変だ。どうしよう」
 思わず不安の声を漏らす。

「どうしたの。濱野さん?」
「私、大変な事に気がついた。私達が元の世界に戻ったら、私達の記憶はどうなるん
だろう」
「そうか、翠ちゃんは人間のままなんだから、僕達がネコモリサマを捜す事もない。
隠れ家に行く事も、時間を遡る事もない。全部が無かったことになる」
「私達がお互いの胸の内を確かめあった事も無かったことになる…」
「元に戻ったら、みんな忘れちゃう…って事か…」三笠君が唇を噛み締める。

「そ、そんなの嫌だ。私達、折角お互いの気持ちを確かめ合ったのに……。それに、
もしも元の自分に戻ったら、とても三笠君に告白する勇気なんか無い」
「僕も、同じかもしれない」
「そんなの嫌。お互いに好き合ってるのに、このままだと、両片思いで告白できない
まま、離ればなれになっちゃう。どうしよう?」
 胸が痛くなってくる。
 二人とも、みんな忘れてしまう。忘れた事すら、忘れてしまう。