「食い意地が張ってるのね、ネコモリサマ」
 ネコモリサマ?
 あれ? 私、この猫の名前を知ってる。なんでかしら?
 そう思う間もなく、髭の猫はドラ焼きを口に咥えて、どこかに走り去った。
 何なのよ、もう。イーっだ。
 ネコモリサマに向かって、鼻のシワを造ってみせる。

「どうやら、これで上手くいったね」三笠君が声をかけてくる。
「上手く…? いった…? あの…いったい何の話ですか?」
「覚えてない? 猫になった翠ちゃんを人間に戻す話さ」
 猫になった翠?
 翠………、猫………、ネコモリサマ………。
 …………………。

 そうだ、思い出した。
 猫になった翠を人間に戻すために、過去にやってきたんだっけ。
「思い出したかい? 作戦成功みたいだよ。周りの様子をみてごらん」
 三笠君に促されて、周囲に目を移す。