「ネコモリサマ。僕達が、この中に飛び込んだらどうなります?」
 三笠君が新しい質問を切り出した。
「この中には、既にお前さんたちが居るからのう。それぞれが合体して一人の人間に
なるじゃろう」
「記憶はどうなります。ここでの記憶は」
「そりゃ、忘れてしまうかも知れんのう」
 うーむ。と三笠君が腕組みする。

「じゃ、こうして下さい。恩返しのお願いは猫に関する事って条件が必要ですから、
僕達のネコモリサマに関する記憶は消えないようにしてください」
「まったく、注文が多いのう、おぬしら。ほれ、順番に頭を出してみい」
 三笠君が、ネコモリサマの前に頭を差し出す。
 ネコモリサマ、二本足で立ちあがるけれど、三笠君の頭に前足が届かない。懸命に
前足をバタバタさせているのが、なんだか可愛い。
 私がネコモリサマを抱きかかえる事で、漸く三笠君の頭に手が届く。
 今度、三笠君がネコモリサマを抱きかかえて、私の頭を触らせる。
 ネコモリサマが触った辺りが暖かくなる。その温もりが、頭の中に染込んで行く。
 これで、ネコモリサマの記憶が定着したというのだろうか。

「ところで、お主。この中に入って、いったい何をしようとしておるんじゃ」
 そういえば、私もこれから何をするのかを聞いていない。
「あのぉ、三笠君。私、この中に入ったら、何をすればいいの?」
 恐る恐る聞いてみる。
「それは……」と言いかけて、三笠君が口ごもる。