「最後の願いは、世界を繋ぎ変える願いじゃありません。僕たちを、ネコモリサマと
濱野さんが最初に会った時間に連れて行って欲しいんです」
「ほーっ。そりゃ、初めて聞く願いじゃ。あのサシチもそんな事は言わなんだわい」
「それじゃ、今まで、やったことが無いんですか?」
「やったことは無いが、世界を繋ぎ変えるよりは簡単じゃ。儂についておいで」

 ネコモリサマが先に立って歩き出す。私達はそれに続く。
 ネコモリサマは、ときおり水の流れを覗き込む。
 えーと、こっちが、あれじゃから……。この方向かのう?
 ここが、あそこら辺じゃから……。もう少し先かのう?
 独り言を呟きながら、歩みを進めるネコモリサマ。

 暫くして、つとネコモリサマが立ち止まる。
「ここじゃな。場所が合ってるか、確かめてみい」
 ネコモリサマが前足で、水の流れを指し示す。
 促されるまま、二人で水の中を覗き込む。

 揺れる水面の向こうに、トボトボと歩く私の姿が見える。
 ウワー! 私、こんな泣きそうな顔で歩いてたんだ。超絶恥ずかしい。
 隣に居る三笠君の顔をチラ見すると、真剣な顔で水の中を観察している。
 その視線の先を辿ると……。

 あれっ?
 私の数メートルほど後ろに自転車を押して歩いている三笠君の姿がある。
 水鏡の中の三笠君は、私の様子を伺うように歩調を合わせて、ついて来ている。
 この後、私が車とぶつかりそうになる処を三笠君に見られる事になるんだけども、
それは偶然の出来事だと思っていた。でも、そうじゃなかたって事?