三笠君が、涙を拭いながら私の体を離す。
「僕に考えがあるんだ。ネコモリサマと話をさせてくれないか」
「うん」
 三笠君がネコモリサマを振り返る。
「ネコモリサマ。ネコモリサマに質問するのは、お願いの数には入りませんよね」
「ん? まあ、そういう事で構わんよ」
「それじゃ、早速。ネコモリサマはカモンさんの事を覚えていますか?」
「カモン? お主、どうしてカモンの事を知っとるんじゃ?」
「僕たちが最初にこの場所に来た時、ネコモリサマが話してくれたじゃないですか。
サシチさんの恩返しは願いの数が無制限だったけれど、次のカモンさんから、願いの
数を三つにしたって」
「儂、そんな話、したかのう?」
「してました。それで、そのカモンさんなんですが、フルネームを覚えてますか?」
「フルネーム?」
「えーと。人間には、二つ名前があるんです。個人の名前と家の名前。僕の場合は、
三笠が家の名前で、聖真が個人の名前。両方合わせてフルネームって言います」
「そんな物、聞いたかのう?」
「多分、聞いてると思いますけど……。思いだして貰えませんか」
 うーむ。と腕を組んで、じゃない、前足を組んでネコモリサマが考える。
 三笠君、なんだってまた、カモンって人の話を持ち出したんだろう。
 翠を人間に戻す話と何か関係があるんだろうか?