私は頬の泪を拭い、精一杯の笑顔をこしらえる。
「私、ネコモリサマにお願いをしたの……。翠を人間に戻せるお願い」
「えっ?! どんな?」
「……それは、後で話す……。……その前に大事なお話があるの」
「大事な話?」
「そう、とても大切な話。今まで、誰にも言えなかった。三笠くんにも……」
「ん? 僕に?」
「恥かしくて口に出せなかった。でも、ネコモリサマの願いが叶えば、私達の記憶は
消えてしまう。だから……、もう何を言っても恥ずかしくない……」

「……」
「私ね…、三笠君の事が好きでした。ずっと前から」
「……」
「今迄は、遠くから憧れてるだけだった。けど、今日は朝から一緒にいて、三笠君が
賢くて、行動力があって、そして……とっても優しいんだって、よく分った」
「……」
「三笠君は私の思った通りの素敵な人だった。私、三笠君の事を好きになって本当に
良かった」
「……ありがとう。濱野さん、とっても嬉しいよ。だけど……、どうして濱野さん、
そんなに悲しい顔をしてるの?」
「……それは……、これで……。三笠君とお別れだから……」
「お別れ? どうして?」
「私、ネコモリサマにお願いしたの。翠を人間に戻す代わりに、私を猫にしてって」