「美寿穂を……猫に……?」
「そうです。何処かしらにか、翠が一人っ子でいる世界がある筈でしょ。その世界と
翠が猫になった今の世界を繋いでくれれば良いです」
「それは可能じゃが、あまり賛成できんのう。元々、美寿穂への恩返しが目的なのに
美寿穂が猫になるのではのう…」
「良いんです。私の今の一番の望みは、翠が人間に戻ることなんですから」
「あっちの三笠という男は、今の話を知っておるのか?」
「いいえ、話してません。だって…、きっと反対されるから」
 三笠君の様子を伺う。まだ、私達の様子に気がついていないようだ。

「ネコモリサマ。善は急げです。早く、私の願いを叶えてください」
「…あんまり、気乗りせんがのう…」
「そんなこと言わないで、お願いします」
 やれやれ。
 私にせっつかれて、ネコモリサマが重い腰を上げる。
 ネコモリサマは、大儀そうな足取りで、先ほどの空中部屋の方に歩いていく。
「本当に、良いのかの?」
 部屋の前で、ネコモリサマが振り返り、私に念を押す。
「はい。お願いします」