「翠は、必ず人間に戻す。たとえ、他の何に代えても…」
 さっき、猫の翠を私に返してくれた、女の子にそう誓った。
 それも、虚しい空約束になった。
 他の何に代えたとしても、もう、どうすることも出来ないんだ。
 何に代えても…。何に代えても……。

 ある考えが閃いた。
 そうだ、この方法なら…。翠を人間に戻せるかもしれない。
 早速、三笠君に相談しよう。立ち上がって、三笠君の方を向く。
 三笠君は、拳を額に押し当て、懸命に思案しながら、歩き回っている。
「ミカサく…」
 そこで、言葉を飲み込んだ。
 これは、私一人で決めねばならないことなんだ。

 三笠君に背を向け、ネコモリサマの所在を探す。
 居た。
 数メートル先の草の陰で、翠とカクレンボに興じている。
 きっと、ネコモリサマも翠を不憫に思って、気を紛らわせてくれているのだろう。
「ネコモリサマ、ネコモリサマ」と小声で話しかける。
「ん。なんじゃ?」
「あの…。二番目のお願いが決まりました…」
「そうか…。言うてみい」
「翠を人間にしてください、…」
「じゃから、それは出来ないと、さっきから…」
「続きがあるんです。聞いて下さい。翠を人間にする。その代わりに、私を猫にして
ください」