「それは、願いを叶えるときに、時間の流れを入れ換えておるからじゃよ」
「時間の流れを…、入れ換える?」
「左様。お主らから見れば時間の流れは一本道に見えるじゃろうが、本当は幾つもの
流れに分かれておる。同じ瞬間に、幾つもの世界が存在しておるのじゃ」
「パラレルワールド…。ですか?」

「お主ら人間が何と呼んでおるかは知らぬがのぉ、ここから見える水の流れが、その
時間の流れじゃ」
「なるほど。さっき流れの中に飛び込んで違う歴史の世界に行ったのは、そういう訳
なんですね」
 と三笠君が納得したように頷く。

「うむ。例えば、美寿穂に妹がおる世界もあれば、美寿穂が一人っ子の世界もある訳
なのじゃ。儂は、元の美寿穂の世界と、美寿穂が猫を飼っている世界とを、繋げたの
じゃよ」
「世界を勝手に繋げ換えたりして良いんですか?」と三笠君。
「元々、時の流れは分かれたり、くっついたりしているからのう。それに、お前たち
人間も自分の都合の良いように川を動かしたり、山を削ったりしとるだろうが」

「確かに…。で、願いを元に戻せないのは、どうしてなんです?」
「世界を繋ぎ変えた結果、美寿穂に妹がおる世界はなくなった。それじゃから、元に
戻そうにも、戻しようがないんじゃよ」
 そこで、ネコモリサマが大きな溜息をつく。
「すまんのう。美寿穂…。翠を人間に戻すのは、諦めて貰うほかないのう」