女の子が、零れそうな泪の顔を上げる。
「お姉ちゃん、ミドリを大切にしてね」
 女の子の健気な言葉が心に突き刺さる。
「うん。うん。翠は私がきっと、幸せにしてみせる」
 そう誓った。

 女の子はきびすを帰して走り出すと、父親の足に縋って泣き出した。
 それから、翠と私を名残り押しそうに幾度も振り返りながら、公園を出て行った。
 私は、父娘の姿が見えなくなるまで、二人に頭を下げつづけた。
「翠は、必ず幸せにする。たとえ他の何に代えても、必ず人間に戻します…」
 そう、心のなかで繰り返しながら。