缶バッチとにらめっこしながら考える。
 あぶり出しの文字が、火にかざして現れるように、記憶が次第に蘇ってくる。
 そうだ、この缶バッチは私が用心のために持ってきたんだ。何か大事な事を忘れた
時に思い出すヒントになるように。
 このバッチは、正に今、この瞬間のために用意してきた物なんだ。

 カワセミがヒントなんだ。カワセミがヒントになっているんだ。
 カワセミは私のお気に入りのマスコット。
 幼い日、私は、あのエメラルドのような羽根の色に魅せられた。
 森の中の宝石のように煌めく、あのグリーンが私は好きだ。
 カワセミ…。翡翠…。グリーン…。ミドリ…。翠…。
 ………翠、………翠。翠、翠、翠。

「思い出した! 私は翠を探しているんだ! 妹の翠を! 猫になった翠を!!」
 思わず、大きな声が出る。
「んん? どうしたの?」と怪訝そうな顔を作る三笠君。
「思い出したの。私の捜しているのは妹の翠。猫になった妹の翠」
「猫になった…? 妹…?」
 三笠君は益々困惑した顔になる。
「三笠君。覚えてない。二人で仁連屋の猫守神社に行った事。猯穴古墳に行った事。
そこからネコモリサマの隠れ家に行った事」
「猫…守…様。ネコモリサマ…。……ネコモリサマ! ネコモリサマ!!」
 三笠君がパッと明るくなる。
「思い出した! ネコモリサマの超次元から、翠ちゃんがこの世界に落ちて、僕たち
翠ちゃんを捜すために、ここに来たんだ」
 そうだ。そうだよ。三笠君。私達は手を取り合って喜んだ。