目の前の地上がどんどん近づいて来る。
 もう、完全に落下しているのと同じだ。
 私達、これからどうなるんだろう。
 このままの地面に激突して終わり?
 嫌な考えが頭をかすめる。

 ぐんぐん地上が近づく。町並みや車の流れ、人の往来まで見て取れる。
 まさか、本当にこのまま地面に…。
 思わず目を閉じる。
 と同時にエレベーターが停まるときに感じるような、急激な減速感を受ける。
 次の瞬間、体の全部が何かと置き換わって行くような不思議な感触に襲われる。
 その刹那、私は意識を失った。

 *****

「濱野さん。濱野さん」
 体を揺り動かされて、目が覚める。
「濱野さん。濱野さん。大丈夫?」
 んーん。何だろう、此処は何処? 私、何をしていたんだっけ?
「濱野さん。目が覚めたかい」
 目の前に、大写しの三笠君の顔が見える。
 えっ! えっ! いったい何? 今、何が起こってるの?
「えーと、何だっけ?」と素直に疑問を口にする。
「傷の手当てをしていたら、濱野さんが急に気を失ったんだよ」
「傷の…手当て…?」
 膝小僧に擦りむくいたような痛みがある事に気がついた。
 膝頭には傷絆が貼られている。
「覚えてないのかい。君は僕の乗った自転車とぶつかったんだ。」