弘道とあたしが週イチで「密会」する喫茶店は表通りからひとつ奥に入った小さな通り沿い、ライブハウスの隣にある。建物の二階に小さな音楽事務所が入っているところが、音楽や演劇、次世代のカルチャーを次から次へと生み出すこの街らしい。
こんなおしゃれな街が地元なんて羨ましいー、と沙有美と莉子にはよく言われる。沙有美は都下から毎日一時間かけて通学してるし、莉子は高校進学と同時に神奈川から引っ越してきたから、住んではいても地元ではない。現実には、おしゃれな古着屋の服にはゼロがひとつ間違って書いてあるんじゃない? と疑いたくなるような値札が付いていて、パンケーキや凝ったラテアートつきのコーヒーを出す店は高校生の経済力じゃ入れない価格設定なんだけど、弘道が教えてくれたこの喫茶店は、コーヒー一杯四百円から。まぁそれでも、ファーストフードの四倍だけど。
でも、わかりづらい場所にあるからか、ここで同じ高校の生徒に会った事は一度もないし、落ち着いた大人の空間、というキャッチコピーが似合う店内は、行った事はないけれど軽井沢あたりの、それこそ本物の別荘の一室みたい。
「お待たせー」
弘道はテーブルが低いソファ席に座っていた。やってきたウエイトレスさんに弘道と同じホットコーヒーを頼む。テーブルの上には別に隠すほどのものでもないんで、って感じでひらりと置かれたテストの結果表。
「見ていいよ」
弘道がぐいと顎を差し出して言う。頭の切れ具合を表しているような濃い眉毛と切れ長の目。正直そこまでイケメンじゃないし、十人中五人が「まぁ……恰好いいんじゃない?」って言うほどのレベルだけど、弘道はいい顔をしていると思う。少し太すぎる鼻筋も、行儀よく並んだ歯も、グレープフルーツみたいな感触の厚めの唇も、あたしは好き。
こんなおしゃれな街が地元なんて羨ましいー、と沙有美と莉子にはよく言われる。沙有美は都下から毎日一時間かけて通学してるし、莉子は高校進学と同時に神奈川から引っ越してきたから、住んではいても地元ではない。現実には、おしゃれな古着屋の服にはゼロがひとつ間違って書いてあるんじゃない? と疑いたくなるような値札が付いていて、パンケーキや凝ったラテアートつきのコーヒーを出す店は高校生の経済力じゃ入れない価格設定なんだけど、弘道が教えてくれたこの喫茶店は、コーヒー一杯四百円から。まぁそれでも、ファーストフードの四倍だけど。
でも、わかりづらい場所にあるからか、ここで同じ高校の生徒に会った事は一度もないし、落ち着いた大人の空間、というキャッチコピーが似合う店内は、行った事はないけれど軽井沢あたりの、それこそ本物の別荘の一室みたい。
「お待たせー」
弘道はテーブルが低いソファ席に座っていた。やってきたウエイトレスさんに弘道と同じホットコーヒーを頼む。テーブルの上には別に隠すほどのものでもないんで、って感じでひらりと置かれたテストの結果表。
「見ていいよ」
弘道がぐいと顎を差し出して言う。頭の切れ具合を表しているような濃い眉毛と切れ長の目。正直そこまでイケメンじゃないし、十人中五人が「まぁ……恰好いいんじゃない?」って言うほどのレベルだけど、弘道はいい顔をしていると思う。少し太すぎる鼻筋も、行儀よく並んだ歯も、グレープフルーツみたいな感触の厚めの唇も、あたしは好き。



