ドイツのデリカッセン。
そこはびっくりハム・ソーセージ博物館といいたくなるほどに、たくさんのハムやソーセージがショーケースの中でひしめき合っていた。
アメリカに住むドイツ人が経営する、限りなくドイツの味に近いハムとソーセージの店。
そこを訪れた、日本人妻とアメリカン夫。
その店の端から端まで広がった、ガラスのショーケースの中には様々な肉の塊やその加工品が乱雑に入り混じって入っているのを、ふたりは興味深く見つめる。
ハム、サラミ、ベーコン、ソーセージ、レバーペイスト、そして知らない種類もあり、店の天井からもドライなソーセージがぶら下がっていた。
塊ごとどさっと置いてあるそれらは、買う時その場で薄くスライスしてくれる。
変わった種類がいっぱいだと二人はどれを買うか迷っていた。
ドイツ語で書かれたハムやサラミの名前が、妻には読みにくい。
適当に指差して注文すれば、店員は最初にスライスした一枚を目の前で見せ、薄さの確認をする。
それでいいと言えば、それを惜しみなく試食として渡された。
スライスしたてのジャーマン仕様のハム──シンケン──を夫と半分こして妻は口にする。
文句なくおいしい。
「ドイツ語ではハムのこと『シンケン』っていうんだね。日本語みたい」
妻は夫に言った。
夫はショーケースを見つめながら適当に返事する。
サラミが気になって、いくつかの種類を見ていた。
サラミも、種類が豊富で、見た目だけでは何が何やらわからない。
夫は店の人と話し、お薦めを訊いていた。
そして後に妻にも説明する。
「これコンニャクで作ってるんだって」
「えっ、コンニャク?」
「うん」
「それ、食べたい。それ買って」
ドイツにもコンニャクがあることにびっくりした妻だが、それでサラミが作れることにも驚いた。
ショーケースの上を超えて差出された店員の手のひらに、紙を敷いて二枚にスライスされたサラミが乗ってあった。
また試食品を惜しげもなく与えられた。
「Is this made of コンニャク?」
コンニャクで作られているのか、はっきりと知りたかった妻は訊ねた。
ドイツ人っぽい店員は「イエス」と堂々と答える。
妻はコンニャクが英語で伝わる事にも驚いた。
トウフもシイタケもエダマメもミソも日本語で通じるようになったが、そこにコンニャクが加わってるとは思いもよらなかった。
カラオケとサケは有名どころだが、フトン、ヒバチ、ベント―、カイジュウ、ツナミなど、他にも多数の日本語が英語圏で通じる。
日本の物が、アメリカではそのまま英語でもその名前で使われるようになってきている。
そのコンニャクで作ったサラミ。
これも新しい日本の夜明けなのかもしれない。
見かけは普通のサラミだが、この中にコンニャクが隠れているのだろう。
妻は期待してそれを口に入れた。
それは普通に美味しかったが、コンニャクはあまり感じられなかった。
「コンニャクが入ってるって言われないとちょっとわからないね」
夫もそんな事をいう。
「でもカロリーが少なくなってるのかも」
コンニャクはカロリーがない。
それが入ってるのならきっと本来のサラミよりカロリーが少ないはず。
妻はウキウキして、コンニャクのサラミが気にいった様子だった。
「コンニャクか、ウフフ、こんにゃく」
あまりにもインパクトが強くて、しつこく妻がコンニャクと連呼した。
夫は不思議な顔をしていた。
「そんなにコンニャク好きなの? だったらリッカーショップに帰り寄ろうか?」
「えっ、リッカーショップ?」
「うん、コンニャク売ってるよ?」
妻は考えた。
何かが噛み合ってない。
リッカーショップはお酒が売ってる所だ。
コンニャク…… コンニャク……
あっ、もしかしてコニャック?
サラミにはコニャックがアクセントに入っていただけだった。
オーマーイガッ!
そこはびっくりハム・ソーセージ博物館といいたくなるほどに、たくさんのハムやソーセージがショーケースの中でひしめき合っていた。
アメリカに住むドイツ人が経営する、限りなくドイツの味に近いハムとソーセージの店。
そこを訪れた、日本人妻とアメリカン夫。
その店の端から端まで広がった、ガラスのショーケースの中には様々な肉の塊やその加工品が乱雑に入り混じって入っているのを、ふたりは興味深く見つめる。
ハム、サラミ、ベーコン、ソーセージ、レバーペイスト、そして知らない種類もあり、店の天井からもドライなソーセージがぶら下がっていた。
塊ごとどさっと置いてあるそれらは、買う時その場で薄くスライスしてくれる。
変わった種類がいっぱいだと二人はどれを買うか迷っていた。
ドイツ語で書かれたハムやサラミの名前が、妻には読みにくい。
適当に指差して注文すれば、店員は最初にスライスした一枚を目の前で見せ、薄さの確認をする。
それでいいと言えば、それを惜しみなく試食として渡された。
スライスしたてのジャーマン仕様のハム──シンケン──を夫と半分こして妻は口にする。
文句なくおいしい。
「ドイツ語ではハムのこと『シンケン』っていうんだね。日本語みたい」
妻は夫に言った。
夫はショーケースを見つめながら適当に返事する。
サラミが気になって、いくつかの種類を見ていた。
サラミも、種類が豊富で、見た目だけでは何が何やらわからない。
夫は店の人と話し、お薦めを訊いていた。
そして後に妻にも説明する。
「これコンニャクで作ってるんだって」
「えっ、コンニャク?」
「うん」
「それ、食べたい。それ買って」
ドイツにもコンニャクがあることにびっくりした妻だが、それでサラミが作れることにも驚いた。
ショーケースの上を超えて差出された店員の手のひらに、紙を敷いて二枚にスライスされたサラミが乗ってあった。
また試食品を惜しげもなく与えられた。
「Is this made of コンニャク?」
コンニャクで作られているのか、はっきりと知りたかった妻は訊ねた。
ドイツ人っぽい店員は「イエス」と堂々と答える。
妻はコンニャクが英語で伝わる事にも驚いた。
トウフもシイタケもエダマメもミソも日本語で通じるようになったが、そこにコンニャクが加わってるとは思いもよらなかった。
カラオケとサケは有名どころだが、フトン、ヒバチ、ベント―、カイジュウ、ツナミなど、他にも多数の日本語が英語圏で通じる。
日本の物が、アメリカではそのまま英語でもその名前で使われるようになってきている。
そのコンニャクで作ったサラミ。
これも新しい日本の夜明けなのかもしれない。
見かけは普通のサラミだが、この中にコンニャクが隠れているのだろう。
妻は期待してそれを口に入れた。
それは普通に美味しかったが、コンニャクはあまり感じられなかった。
「コンニャクが入ってるって言われないとちょっとわからないね」
夫もそんな事をいう。
「でもカロリーが少なくなってるのかも」
コンニャクはカロリーがない。
それが入ってるのならきっと本来のサラミよりカロリーが少ないはず。
妻はウキウキして、コンニャクのサラミが気にいった様子だった。
「コンニャクか、ウフフ、こんにゃく」
あまりにもインパクトが強くて、しつこく妻がコンニャクと連呼した。
夫は不思議な顔をしていた。
「そんなにコンニャク好きなの? だったらリッカーショップに帰り寄ろうか?」
「えっ、リッカーショップ?」
「うん、コンニャク売ってるよ?」
妻は考えた。
何かが噛み合ってない。
リッカーショップはお酒が売ってる所だ。
コンニャク…… コンニャク……
あっ、もしかしてコニャック?
サラミにはコニャックがアクセントに入っていただけだった。
オーマーイガッ!