ふわふわとした、優しい温もり。
穏やかな声と、大きな手。


私は、たぶん知っている。
この温もりを感じたのは、きっと初めてじゃない。


あれは確か、まだ幼い頃のこと。
おばあちゃんと遊びに出かけた先でたくさんの人の波に飲み込まれ、迷子になって泣いていた時だった。


『どうした、迷子か?』

『うん……おばあちゃんがいないの……』


しくしく泣きながら歩き、すっかり疲れ切ってしまっていた私は、今の空の色とよく似た着物を着た人に話しかけられた。
直後、その優しい声に安堵したのか、さらに涙が止まらなくなった。


運悪く、晴れていたはずの空からは雨が降り始め、持っていた傘を差したけれど、あっという間に強まった雨足のせいで足元はびしょ濡れになっていた。
それが余計に心細さを強くし、私はお気に入りの傘の持ち手を一生懸命握っていた。


『泣くな。この道を真っ直ぐ歩いて行けば会える』

『え? 本当?』

『ああ、あちらもお前を探している。すぐに会えるから、なにも心配することはない。ほら、早く行け』

『うん! ありがとう!』


なぜか素直に信じ、お礼を言って駆け出した。
そして、本当に私を探していたおばあちゃんに会え、ホッとした私は大声を上げて泣いた――。