〝その日〟は、程なくして訪れた。


「あれ? ギンくんは? まだ台所にいるの?」


おやつの時間を迎え、いつものようにコンくんとともに居間に行くと、雨天様の姿しか見当たらなかった。
今日のおやつは、よもぎの生地であんこを包んだお饅頭で、朝に聞いていた通りの甘味は四人分並べられているのに、ここには私を入れて三人しかいない。


「え?」


直後に小さく声を漏らしたのは、コンくんだった。
驚いたような顔で私を見るコンくんに、なにかまずいことでも言ってしまったのかと一瞬だけ悩んだけれど……。

「ひかり。ギンなら、いつもの場所に座っておる」

雨天様は、すぐに私を見ながら微笑み、ごく普通に答えた。


「え? だって……」


そんなはずはない。
いつもギンくんが座っている場所に、ギンくんはいないのだから。


「あの――」

「ひかり、ギンのことが見えないのだな?」


だけど、そのあとすぐに現実を突きつけられた。
確かめるような声音の中には確信が込められていて、その質問が念のための確認であるのだと気づく。


現実をまだ言葉にできなくて、戸惑いを見せつつもなんとか小さく頷いた。